7月13日の朝日新聞夕刊に、阿南英明・神奈川県立病院機構理事長の「進む高齢化、災害医療のあり方は」が載っていました。
・・・神奈川県の新型コロナ対策を率いた救急医は1月、能登半島地震のDMAT(災害派遣医療チーム)の一員として、石川県庁でDMATや自治体間の調整役を務めた。過去の災害支援やコロナ下の経験をもとに、今後の災害時医療に求められることを聞いた。
「能登の避難所にいる高齢の被災者の衰弱が激しい。命を救うため、広域搬送が必要な人がまだいる。しかし、使いにくい法律がなんと多いことか」
広域搬送が必要になる人の大半は、お年寄りだ。医療を受けられる入院先の病院とともに、落ち着いて生活できる介護施設を見つけることが急がれていた。
しかし、介護保険法では、施設への入所条件は要介護認定に基づく。要介護3以上の人が対象の施設には原則、1や2の人は入れない。避難生活で急激に状態が悪化しても、容易に入所はできない。速やかな要介護度の区分変更が望ましいが、変更するには主治医が意見書を書く必要があった。
見直しの要望を厚生労働省に上げ、1月中旬には主治医でなくても意見書を作れるようになった。でも、認定作業には一定の時間がかかる。災害救助法の解釈には、省庁によるばらつきが目立った。
神奈川に戻った1月末。「フェーズは変わった」と語った。
「急性期の価値観はとにかく助けるでいい。でも時間がたつほどに多様性の重要性が浮き彫りになる。あなたはどうしたいのか? 能登を離れるのか、残りたいのか。それぞれの思いをくみとり、対処するのがあるべき姿」
被災地の病院の救急運営や高齢者の受け入れ先を見つけることに加え、地元の施設に物資や人を補い、再開や存続を支えることもDMATの目的になった。活動は1カ月を超し、異例の長期間となった。
6月。DMATの活動が長期化した主な理由を改めて問うと、「高齢化」という答えが返ってきた。
被害が深刻だった地域の高齢化率は、2011年の東日本大震災は20%台。これが能登半島地震では5割近くになっていた。
受け入れ先を探すのは困難で、復旧を担う側にも高齢の人が多い。離職者も増え、施設再開に時間がかかった。
高齢化はさらに進む。これから起きる災害では、医療やケアの存続が難しいという同じ問題がどこでも起きるのでは?
阿南さんはうなずき、続けた。「こういう社会に我々は暮らしているとまず、認識しなければならない。特効薬はない」・・・