連載「公共を創る」第192回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第192回「政府の役割の再定義ー行政組織のパラドックス」が、発行されました。前回から、幹部官僚に職務を果たさせることを議論しています。まず、自らの所管行政についてです。

制度を所管している、それを運用すればよいという「制度所管思考」から、所管範囲で課題を見つけ取り組むという「課題所管思考」に転換しなければなりませ。その思考を、若いときから植え付ける必要があります。それを指導するのは局長であり課長の役割です。もっとも、それをしたことがない、それに消極的な上司も多いのです。この「社風」を変える必要があります。
もう一つは、外部からの入力です。かつてはほぼ局ごとに審議会があり、有識者を入れて新しい課題と解決方向を議論していました。これは、有用な仕組みです。地域で起きる新しい課題について、研究者、報道機関、非営利団体、そして自治体は官僚より情報を持っていることが多いのです。審議会という形式にこだわらず、彼らの知見を取り入れて新しい課題に取り組むことがよいでしょう。

さて、パラドックスとは、次のようなことです。制度を所管している組織の方が、所管していない人より課題を見つけやすいと考えますが、そうならないことがあるのです。制度を所管していると、それの運用に注力し、課題が発生していても気がつかないことが起きるのです。例えば、その制度に関して補助金を持っていると、補助金配分だけで終わってしまうのです。