新聞の役割

5月1日の朝日新聞に、朝日新聞の1面広告が載っていました(ウェッブでは見当たりません)。朝日新聞デジタルの宣伝です。情報量が紙面の5倍だというのが、売りのようです。
しかしこの宣伝では、読者を増やすことは難しいでしょう。もちろんこの宣伝は紙面に載っているので、新聞を読んでいない人には効果がありません。すでに新聞を購読している人向けの宣伝であり、デジタル紙面へ誘導する宣伝なのでしょう。

新聞社が力を入れなければならないことは、新聞を読んでいない人、特に若者を勧誘することでしょう。若い人は、新聞を読んでいません。ニュースは、インターネットで無料のものを見ています。そしてそれで満足しています。この人たちに、デジタル紙面は情報量が多いことを訴えても、金を出して買おうとは思わないでしょう。

私は、インターネットのニュースと、新聞紙面とは異なる報道媒体、目的が異なる情報機関だと考えています。出来事としてニュースを見るなら、インターネットが早くて便利です。NHKのウェッブサイトを見れば十分です。
新聞紙面の機能は、ニュースを伝えることではありません。世の中にある膨大なニュースから重要なものを選択して、並べてくれるのです。新聞の機能は、編集長が選択し、限られた紙面の中に並べてくれることにあります。新聞紙面を読むことは、編集長を雇っていることなのです。新聞は情報量が限られていることが「売り」なのです。インターネットで記事を追いかけると、無限に広がり、時間はかかるし、終わりがありません。
そして世間では、どのような話題が中心になっているのか。それは、紙面での記事の扱い、場所と分量が示してくれるのです。

このことは、かつて日経新聞夕刊1面のコラム(2018年4月12日)にも「新聞の読み方」として書きました。
・・・あるテーマを早く深く知るなら、インターネットの方が効率的だ。しかし、好きな分野だけを深掘りするのではなく、社会の動きを知ることが重要だ。何が大きく扱われているかを知ること。膨大な数のニュースから編集者が切り取って並べてくれている。それを活用しよう・・・

その機能から、もう一つの効果があります。関心のない記事も目に入るということです。インターネットでニュースを見ていると、自分の関心のあることと興味を引くことだけを見るようになります。しかし、紙面では関心のない記事が大きく扱われています。それが社会では、重要事項なのです。その記事を読む必要はありません。そんなことがあることさえ知っていおればよいのです。社会で活躍するには、現在の社会での問題は何か、一通りの知識は必要です。それには、インターネットでなく紙面を見ることが効率的です。

新聞社も若者の新聞離れを嘆く前に、どのように宣伝したら、学生や若い社会人に買ってもらえるかを考えるべきです。まず、学生と新社会人向けに、新聞の読み方、利用の仕方を説明した小冊子を作り、ウェッブ上で公開してください。どこかに載っていたら、教えてください。

「子持ち様」子育て世帯の肩身が狭くなる

5月26日の読売新聞「加速化する少子化」、駒崎弘樹・NPO法人フローレンス会長の「子育て支援は自分への投資」から。こんなことが、起きているのですね。

・・・最近、SNSを中心に「子持ち様」という言葉が広がっています。子どもを育てる親が、職場などから配慮を受けることをやゆするものです。「子持ち様の子がまた熱を出したとか言って休んだ。そのカバーで仕事が増えた」などといった使われ方をしています。
共働きが当たり前の世の中になり、少子化対策が叫ばれる中、20~30歳代の未婚の男女からそうした声が上がることに衝撃を受けています。不満をぶつける相手は、仕事のカバー態勢を整えていない会社側であるはずです。「被害者が被害者をたたく」ような悲劇的な構図だといえます。

1980年代は全世帯の半数近くに子どもがいましたが、今は2割弱と少数派になっています。こうした言葉により、子育て世帯の肩身が狭くなり、子どもをさらに産もうという気持ちが薄れてしまうのではないでしょうか。その結果、少子化が加速するのではないかと危惧しています・・・

佐藤 直子著『女性公務員のリアル』

佐藤直子著『女性公務員のリアル なぜ彼女は「昇進」できないのか』(2023年、学陽書房)を紹介します。
次のような話が紹介されています。
「やる気、体力、時間があるときに、仕事をすることの楽しさを実感できる仕事を任されず、雑用に真面目に従事する。その後も、子どもを産み育てている間に、もしくはほかの仕事があると知らずに雑用だけやっている間に、考える頭と体力を失い経験・知識不足に陥り、自信を喪失。40近くで現状に気付き、退職までの十数年をいかに無難に過ごすかが一番の関心事となる。今から昇任しても雑用の長になるだけだから、なりたくないと思ってしまう。(40代前半・主任・女性)」

男女共同参画がようやく進み、採用試験でもその後の配属でも、男女差はなくなりつつあります。しかし依然として、女性管理職は少ないです。その理由は、これまで女性職員を男性と同じように育ててこなかったことがあります。庶務や定型業務に従事させて、企画、財政、人事など基幹的な部署に配属せず、その後の管理職への登用が難しかったのです。私は、富山県総務部長の時(1994年~98年)に、気がつきました。

ところで、このような議論ができるようになったのは、ここ最近のことです。昭和の時代では「女性は補助業務」が通念でした。男女差別が禁止された際に、企業では総合職と一般職という区分を持ち込み、女性を一般職として昇進が少ない職としました。
他方で、総合職で採用された女性も、配属部署と経験で、男性とは差がつけられることが多かったのです。昭和に育った上司も、女性幹部候補をどのように育成したら良いか、わかりませんでした。そこには、家庭を犠牲にして長時間労働を強いる職場の問題もありました。家庭でも、夫は家事を分担せず、たまにすると「協力」と表現したのです。保育所も充実してませんでした。

その時代を見ている私からすると、ようやく職場での男女平等が進みつつあるなと思います。職場の通念と社会の通念が変わるには、ひと世代がかかるのかもしれません。今後、急速に変化するでしょう。働き方や家庭での男女の役割については、私たちは革命の中にいると言えるでしょう。憲法や法律では変わらなかったことが、変わりつつあるのです。

政党、密室での政策形成

5月18日の読売新聞解説欄に、若江雅子編集委員の「個人情報保護法 見直し デジタル政策作り「密室化」」が載っていました。少々込み入っているので、原文をお読みください。

・・・個人情報保護法の3年ごと見直しを巡り、IT業界のロビー活動が激しさを増している。これに呼応するように自民党デジタル社会推進本部や霞が関のデジタル庁も規制強化への警戒を強め、同党が近く政府に提出する「デジタル・ニッポン2024」の素案には個人情報保護委員会の執行と政策立案の権限を分離させる提案まで盛り込まれた。国民には見えにくい「密室」での政策形成について考えた・・・

・・・「経済界が望まない課徴金の話が、なぜ出てきたのか」
4月4日、東京・永田町の自民党本部。デジタル社会推進本部の会議で、個情委の幹部らは同席した経済団体の関係者の前で議員から問い詰められていた。
経済団体は数か月前から、個情法見直しに絡む不安を議員らに訴えてきたという・・・

・・・「どのくらいの規模感を想定しているのか。個情委の腹の中が知りたいのに、彼らは我々と対話をしない。これが一番不満だった」。業界側のあるロビイストはこう打ち明ける。「党のデジタル本部の方がよく聞いてくれる」
彼らの声を代弁するかのように、議員らは「民間と対話をしないのは良くない」と繰り返した。同席していたデジタル庁の幹部も、「前はもっと経済団体と議論を重ねた」「今の個情委は『保護』に振れすぎ」と同調したという。
ただ、今回の見直し作業では、個情委は昨年11月以降12回にわたり関係団体や有識者のヒアリングを行っており、経済団体は13団体が呼ばれ、このうち経団連や新経済連盟など4団体は2度も呼ばれている。消費者団体はたった1団体で一度きりだ。
それでも先のロビイストは「正式なヒアリングはこちらが意見を述べるだけ。非公式の場で腹を割って話し合いたいのに」と訴える。
だが、長年、情報通信分野の消費者問題に取り組んできた長田三紀・情報通信消費者ネットワーク代表はこう嘆く。「日本の目指すデジタル改革は『経済界のためのデジタル改革』なのか。せめてオープンな場でやってもらわないと消費者側の意見がどこからも出てこない」・・・

・・・憲法が専門の東大教授、宍戸常寿氏は「法律の執行機関がその執行を踏まえて法律を見直すのは当然で、個情法の立案と執行は個情委が所管すべきだ」と指摘する。その上で「内閣のデジタル政策全般の調整は、デジタル版の経済財政諮問会議のような会議体を作って公開の場で行ってはどうか」と提案する。意図するのは議論の可視化だ。
自民党のデジタル社会推進本部は、20年10月に特別委員会から昇格して本部になったばかりだが、企業や団体、有識者や官僚を頻繁に呼んで情報収集し、近年、急速に影響力を増している。ただ、そこは交わされた会話の記録さえ情報開示の対象にならない非公式な空間だ。国民の目の届かない「密室」にデジタル政策の形成の場が設けられることには危うさを感じる。
宍戸氏は「いまは与党と民間事業者と行政機関の間で、我々市民には見えない形で政策の調整がなされている。『非公式な影響力』が肥大化しすぎないよう、政策調整を公のプロセスの中に組み入れ、透明化をはかる必要がある」と話す・・・

ナツツバキが咲きました

今朝、玄関に出てみると、ナツツバキが一輪、白いきれいな花を咲かせていました。
ご近所には、ヒメシャラの木が何本かあり、先日から白い花を咲かせています。2センチ程度のヒメシャラの花に比べて、ナツツバキははるかに大きく5センチ以上あり、存在感があります。でも、一日で散ってしまうのです。

まあるいつぼみが、たくさん膨れてきているので、これからも期待できます。2022年は6月6日に咲いています。この年はたくさん咲いたのですが、去年はなぜかだめでした。