厳しい予算要求基準が生んだ弊害

忙しい職場の生産性低下」の続きにもなります。「小さな政府」を目指す方向を続けていると、役所の機能が低下するということです。

税収が伸びず、毎年の予算要求には厳しい制限がかけられています。ゼロ・シーリングやマイナス・シーリングと呼ばれます。各府省は一部例外の項目を除いて、前年度の予算額を基礎として、同額かあるいは一定率の削減を求められます。
新しい事業を考えても、スクラップ・アンド・ビルドの方針の下、既存予算を削減し、財源を捻出しなければなりません。しかし各予算項目は、それなりに理由があって行っているものであり、そう簡単に削減したり廃止したりすることができません。
税収が増えない以上、厳しい予算要求基準はやむを得ない手法ですが、これが続くと、新しい政策を考えることに消極的になります。

私が恐れるのは、このような状況が長年続き、若い官僚たちには、新しい政策を考え実現するという経験がなくなり、その状況が普通だと思ってしまわないかということです。

事業者なら、売り上げを上げて、人を増やし組織を拡大することを目指します。ところが、この30年間の日本は、行政にあっては行政改革という旗印で、企業にあってはリストラという名の下で、縮小することが善とされました。一時的に縮小すること、選択して撤退することはあるでしょうが、縮小を続けていく先にあるのは衰退です。
長期間にわたって売上高と従業員数を削減したことを誇る経営者は、失格でしょう。
同様に、予算と公務員を増やさないことを誇る政府は、国民に向かって「サービスを増やしません」と宣言しているようなものです。