哲学書の翻訳は理解できない文章だった

朝日新聞連載「人生の贈り物」、5月14日は長谷川宏さんの第11回「ヘーゲル新訳、読書会に鍛えられて」でした。

《1992年、ヘーゲル「哲学史講義」の新訳を発表。平易で明晰な訳文は画期的と大きな反響を集める》
従来の哲学書の邦訳は生硬で不自然、何度読んでも納得できない文章が多かった。それが哲学をとっつきにくいものにしたという不満があったんです。
81年から、サラリーマンや学生の人たちとヘーゲルをドイツ語で読む会を開いていました。地域の読書会でも、東京都国立市の市民講座などでも、ヘーゲルを取りあげました。
「哲学史講義」の新訳は、彼らとの語らいで鍛えられ、背中を押されたのは間違いない。日本語としての読みやすさを心がけました。逐語訳でなくわかりにくいところは砕いて訳した。「即自」「対自」「措定」「悟性」などもあえて使わない。専門家以外はイメージを抱きにくいと考えたからです・・・

指摘の通りです。私が大学生の時代は、哲学、特にドイツ系、マルクス主義などの翻訳は、「これが日本語か」と思うような文章がまかり通っていました。当初、私は私の頭が悪いのだと思いましたが、そのうちに、これは訳文が悪いんだと気がつきました。

連載「公共を創る」第187回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第187回「政府の役割の再定義ー震災復興、政治主導の在り方と官僚の仕事」が、発行されました。前回に引き続き、東日本大震災対応の経験をお話しします。大震災対応については、本に書いたり、この連載でも冒頭に書いたのですが、今回は特に私が事務方の責任者として、幹部官僚として何を考えたかを書きました。

被災者支援の次は、公共インフラの復旧と公共サービスの再開を急ぎました。町が流され、その場所は危険なので、高台移転などこれまでにない大きな計画と大工事を行いました。これはこれで大変だったのですが、各省が頑張ってくれました。
ところが、その工事が進むにつれ、それだけでは町のにぎわいが戻らないことが分かってきたのです。生業と産業が再建されないと人は暮らしていけず、活気と人のつながりが戻らないと人は孤立するのです。そこで、災害復旧の哲学を「国土の復旧」から「生活の再建」へと転換しました。

もう一つ実務の責任者として考えなければならないことがありました。政治との関係、政治主導との関係です。
民主党政権は官僚を排除した政治主導を唱えていました。しかし、政治家には政治家の、官僚には官僚の役割があります。そして、被災者支援や災害復旧について経験と知識を持っているのは官僚です。私は「官僚の力量を示そう」と同僚や部下に話しました。大臣や官房副長官も、私たちに任せてくださいました。
自民党が政権に復帰してからは、大島理森・自民党復興加速化本部長(後に衆議院議長)の指導の下、与党提言をまとめていただき、それを総理が受け取り、政府が実行する仕組みを作りました。政治指導、政府与党が一体となって政策と事業を進めるよい形だったと自負しています。

新入社員4割が転職検討

5月9日の日経新聞に、「新入社員4割が転職検討」が載っていました。

・・・新卒や入社数年の若手社員の早期退職が目立っている。新入社員の4割以上が転職を検討しているという調査もある。深刻な人手不足が続く中、有望な人材をつなぎ留められなければ企業経営は揺らぎかねない。企業は入社後に若手をきめ細かくフォローする体制を整え、抱える悩みや感じるギャップに対処する必要に迫られている・・・

就活情報サイトを運営するキャリタスが2月に実施した2023年春入社の社会人を対象に実施した調査では、4%が転職活動中で、39%が検討中です。リクルートマネジメントソリューションの2023年調査では、正社員として勤務する入社1~3年目の17.5%が自己都合退職を経験しています。

若手社員が会社を辞めたいと思う理由は、次の順です。仕事にやりがいや意義を感じない27%、給与が満足できない19%、自分のやりたい仕事ができない13%、会社の将来が不安12%、動労環境・条件が悪い12%、職場の人間関係が悪い12%です。

会社の側も対応を迫られています。就職してからの対応も必要ですが、会社を選ぶ際に十分な情報を与えることも重要でしょう。
5月13日の日経新聞夕刊「関心集める「エンゲージメント」 社員生かす経営の尺度」では、エンゲージメントは働きがいややりがいとは同意ではなく、例として仕事に対する情熱、会社に対する愛着との定義を紹介しています。日経新聞社などが2023年12月に実施した調査では、東証プライム上場企業の人事部門役職者の47%が組織上の課題に「エンゲージメント」をあげ、「生産性の向上」は41%でした。

被災地での農業支援

このホームページでしばしば紹介している、原発被災地での、企業などによる営農支援。今年も引き続きやってくださっています。
浪江町では、5月12日に、田植えが行われました。アイリスグループ社員、東京農業大学の学生、いわきFCアカデミーU14・15、福島県12市町村への移住者、それにアイリスオーヤマの大山社長、浪江町の吉田町長も参加してです。

また、新しい取り組みもあります。南相馬市では5月11日に「みらい農業学校」が開校し、市内外の20歳から55歳までの15人が入校しました。この学校は、マイファーム(京都市)が運営し、1年間で、農業法人に就農できるよう支援する研修機関です。「福島民報記事」「マイファームのサイト

それぞれに、ありがとうございます。

目標実現のための戦略を持つ。教養が必要

5月9日の日経新聞夕刊、私のリーダー論、米パーソンズ美大・大森美希さんの「辞める日視野に就職を」に、次のような指摘があります。

――目標を実現するために必要なことは。
「自分のやりたいことが見つかったら、その時点からすぐにビジョンを実現するための戦略を持つことをお勧めします。私は学生時代、ファストフードやスーパーのレジ打ちのバイトをしている時でも、得られるスキルを将来、ファッションデザイナーになったときにどう役立てるか考えていました。戦略を持っておけば、いろいろな回り道をした経験も後で有効にいかせるようになります」

――日本の多くのファッションブランドは海外の流行の後追いをしているとの指摘もあります。世界の最先端の業界の現場では、新たな流行はどのように形作られるのでしょうか。
「トレンドを創るデザイナーたちは、社会の雰囲気、空気感や同じような時代だった過去のファッションを参考にします。将来への人々の願いも反映されます。例えばコロナ禍の後だから開放的な明るい色や花柄が良いとか、インフレで生活が苦しいからもっと地味なものを好むとか、様々な要素が影響します」
「優れたデザイナーは1929年の大恐慌の後のファッションとか、過去のトレンドのほとんどを把握しています。そのうえで次の潮流を考えていくわけですが、そこで大事なのは教養です。たくさんの一流のアーティストと付き合いましたが、ファッションで一流でありたいと思うのなら専門外の本や芸術に親しむなど幅広い教養を持つことが重要だといつも感じます」