5月17日の朝日新聞オピニオン欄に、藤村厚夫さんが「価値ある1面記事、非購読者にも」を書いておられました。意見に賛成です。
・・・メディアから得る情報は、私たちを取り囲む社会や世界を深く理解する出発点として重要な役割を果たしている。だが、その一方で、ニュースの流通量は増えるばかりだ。膨大な情報の山に囲まれていては、その対処に疲労を覚えることもしばしばだろう。
「これは本当に起きたことか?」「この解説は正しいか?」などと、つねに情報の吟味を繰り返さなければならないのは、時に苦痛でもある。となれば、信頼のおける第三者にこの対処を委ねたくなるのも当然だ。多すぎる情報をその重要性や信頼度から絞り込めるなら、読者の負担は軽減する。信頼に足るメディアが求められるゆえんだ。
筆者が携わるスマートニュース メディア研究所が2023年に実施した「メディア価値観全国調査」(第1回、QRコード参照)では、そんな情報の価値判断をめぐって、人々の期待値が明らかとなった。
調査では、メディアをめぐって多数の問いを設けたが、端的に「新聞の1面に掲載されるニュース」を重要なニュースと見るか否かも尋ねた。「重要だ(かなり重要である+やや重要である)」と回答したのは全体で76%と高い評価を見せた・・・
・・・両調査を通じて見えてくるのは、新聞に求められる役割は、正確で信頼性の高い情報発信だけではなく、情報を重要性で絞り込む(新聞社の)“価値判断そのもの”でもあるということだ。新聞1面への高評価はその最たる例だろうし、「安心できる」の高スコアにも対応する。
どの記事を1面に掲載するかは流動的で、新聞社内ではつねに侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論が戦わされていると、筆者の取材に応じた朝日新聞の春日芳晃・編集局長兼ゼネラルエディターは答えてくれた。掲載の基準には定式があるわけではなく、鮮度や重要性の高さ、あるいは時間をかけて取材してきた企画などの記事が、日々、1面の座を占めるべく競いあっている。
だが、新聞が持つこの重要な価値を、新聞に日常的に触れていない人々が体験できているかといえば、心もとない。インターネットメディアの時代では、朝日新聞ならば、「朝日新聞デジタル(アプリ)」や「朝日新聞紙面ビューアー」に新聞1面に相当する機能を求めることになる。だが、有料購読者限定という壁がある。多くの非購読者は、「厳しい取捨選択を経て絞り込まれた日々の重要な情報の提供」という価値の醍醐味を体験しないままだ。その接し方は、朝日新聞の記事であったとしても、ネットに広がる「多すぎる情報」の一部として体験するにすぎない。
その意味で、紙面ビューアーや、重要なニュースを3本に絞って解説する「ニュースの要点」を(一部機能を制限するなどして)広く無償で提供できないものか。「朝日が考える今日の重要なニュース」という指針を広く示すのだ。あわせて他のメディアの価値ある情報も選別して紹介すれば、朝日新聞の持つ取捨選択力を独立の価値として示せる・・・