連載「公共を創る」第187回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第187回「政府の役割の再定義ー震災復興、政治主導の在り方と官僚の仕事」が、発行されました。前回に引き続き、東日本大震災対応の経験をお話しします。大震災対応については、本に書いたり、この連載でも冒頭に書いたのですが、今回は特に私が事務方の責任者として、幹部官僚として何を考えたかを書きました。

被災者支援の次は、公共インフラの復旧と公共サービスの再開を急ぎました。町が流され、その場所は危険なので、高台移転などこれまでにない大きな計画と大工事を行いました。これはこれで大変だったのですが、各省が頑張ってくれました。
ところが、その工事が進むにつれ、それだけでは町のにぎわいが戻らないことが分かってきたのです。生業と産業が再建されないと人は暮らしていけず、活気と人のつながりが戻らないと人は孤立するのです。そこで、災害復旧の哲学を「国土の復旧」から「生活の再建」へと転換しました。

もう一つ実務の責任者として考えなければならないことがありました。政治との関係、政治主導との関係です。
民主党政権は官僚を排除した政治主導を唱えていました。しかし、政治家には政治家の、官僚には官僚の役割があります。そして、被災者支援や災害復旧について経験と知識を持っているのは官僚です。私は「官僚の力量を示そう」と同僚や部下に話しました。大臣や官房副長官も、私たちに任せてくださいました。
自民党が政権に復帰してからは、大島理森・自民党復興加速化本部長(後に衆議院議長)の指導の下、与党提言をまとめていただき、それを総理が受け取り、政府が実行する仕組みを作りました。政治指導、政府与党が一体となって政策と事業を進めるよい形だったと自負しています。