昨日の記事「人手不足」の続きになります。5月4日の朝日新聞「人手不足「感じる」7割 不安の最上位「医療・介護」80% 朝日新聞社世論調査」には、次のようなことも指摘されています。
・・・人手不足の業種を対象とした政府の外国人労働者の受け入れ拡大方針については、2018年11〜12月の郵送調査でも尋ね、賛否は44%対46%と拮抗していた。5年余りで大きく賛成へと傾き、特に18年調査で消極的だった高齢者の賛成が大幅に増え、60代では35%だった賛成が63%へと急増した・・・
5年間で、国民の意識はこんなにも変化するのです。ある程度の予測がつく近未来についても、人は現状を変えることに消極的で、現実が変化すると「気がつく」ようです。
国民だけでなく、日本政府もこのような意識の上に成り立っているようです。移民政策を正面から掲げず、なし崩し的に事実上の移民受け入れを進めています。「建前は変えず、現実の変化を容認する。そして現実の変化が一定程度を越えると、建前を変える」のです。建前を守るために、現実の変化を阻止しようとはしません。成り行きに任せると言ってもよいでしょうか。
5月17日の朝日新聞夕刊、久保田一道記者の「人手不足 外国人労働者、確保の鍵は共生」に、次のような話が載っています。
・・・労働力不足を背景として、国内の多くの産業に欠かせない存在となった外国人労働者。この春、今後の受け入れをめぐる議論が相次いで節目を迎えている。
一つが、2019年に導入された在留資格「特定技能」の労働者の受け入れ枠を広げる政府方針の決定だ。制度導入時に34万5150人と設定した5年間の受け入れ枠を大きく拡大し、今後5年で82万人とした・・・
制度導入に向けた議論では、与党内から「事実上の移民政策だ」と反発の声があがったが、政府が見直しの方針を説明した今年3月の自民党の会合で、正面から異を唱える議員はいなかった。ある自民議員は「地元の経営者の話を聞けば、外国人労働者の必要性は明らか」と実情を語った・・・
なし崩し的な移民受け入れは、就労目的以外で入国させ労働者として働かすことが多く、正面玄関からでないことから、「バックドア」「サイドドア」からの移民と呼ばれます。コンビニ、工場、水産業、旅館・・・いろんな職場で外国人労働者が働いています。今や彼らなしには、産業が成り立たないでしょう。
なし崩し的政策変更も一つの手法ではありますが、正面から移民を認めないことは、彼らを受け入れる各種の制度が不十分になります。教育、医療保険、地域社会への包摂などです。