仕組みの解説と機能の評価

仕組みと機能、その使い方の違いを考えています。
古くは、『地方交付税・仕組みと機能-地域格差の是正と個性差の支援』(1995年、大蔵省印刷局)を書いたときです。ここで、「仕組みと機能」を使いました。「制度の仕組みだけでなく、機能、結果、歴史などの角度から多面的に解説してあります」とうたってあります。
交付税制度の解説書は、すでにいくつかありました。これを書くときに、従来の「仕組みの解説」では、価値がないなあと思ったのです。1954年に制度が作られて、私が課長補佐の時(1992年頃)は、すでに定着していました。そこで、「仕組みの解説」だけでなく「果たしている機能」を書いたのです。戦後の復興期から高度成長を経て、財政や日本社会でどのような機能を果たしているかを説明しました。仕組みの解説は、制度を知っていたら書けるのですが、果たしている機能は、制度を知っているだけでは書くことができません。

政治学や行政学の教科書も、仕組みの解説で終わっているものが多いです。代議制民主主義や基本的人権の尊重も、趣旨や制度の解説であって、それが実際にどのように運用され成果を上げているかが書かれていません。戦後半世紀にわたって、男女同権は憲法に掲げられながら、実質的ではありませんでした。ハンセン病患者の隔離においても、機能していなかったのです。

法律学も同様です。法律の規定と趣旨を学ぶことは重要なのですが、それがどのような機能を果たしているかを合わせて学べば頭に入るでしょう。また、たくさんの法律が制定されていますが、どれだけ効果を発揮しているかを検証すべきです。法律や制度は作っただけでは、機能しません。絵に描いた餅ということわざもあります。この項続く