妻の働き方で、世帯手取り2億円差

4月23日の朝日新聞くらし欄に「妻の働き方で「世帯手取り2億円差」 「出産後退職」と「仕事継続」、都試算」が載っていました。

・・・妻が出産で退職した場合と働き続けた場合を比べると、世帯の手取り収入は生涯で2億円近い差が出る――。そんな試算を東京都の有識者会議がまとめた。パートで働く人の「年収の壁」論議では、社会保険料の支払いで手取りが減る側面が注目されたが、保険料を払うことで増える年金を含めた「生涯の手取り」を見える化する取り組みだ。

試算のきっかけは、都が有識者を招いて昨年3月にスタートさせた「東京くらし方会議」(座長・権丈善一慶応大教授)。働き方改革のコンサルティングを手がける「ワーク・ライフバランス」の小室淑恵社長、税制に詳しい東京財団政策研究所の森信茂樹・研究主幹や、労働組合や企業出身の委員が議論を重ねてきた。
この会議では働き方や生き方に関する社会保障制度も主要な論点で、関心の高い「年収の壁」を取り上げた際、「目先の保険料負担で手取りが減るのは分かりやすいが、将来の手取りがどう変わるのかが見えにくいので可視化したらどうか」という提案を受けて、事務局の都産業労働局が試算した。

試算では、22歳で就職したカップルを想定。35歳で年収(額面)が600万円になり、64歳まで働き続ける夫のライフコースは固定したうえで、31歳まで夫と同じ年収で働き、出産した妻が、夫と同様に就業を継続した場合から、退職して就業しなかった場合まで、四つの異なる就業パターンごとに、世帯全体の賃金と年金の手取り額を89歳まで累計した。その結果、示されたのは次のような内容だった。
(1)妻が出産後も同じ職場で働き続ける「継続就労型」では、社会保険料と税引き後の給与と年金をあわせた総手取り額が約5・1億円(うち年金1億円)
(2)出産で退職、子が10歳の時に再就職して年収300万円、フルタイムで64歳まで働く「再就職型」だと約3・8億円(年金9千万円)
(3)出産で退職、子が10歳の時から年収100万円のパート(会社員や公務員に扶養される年金の「第3号被保険者」)で働く「パート再就職型」では約3・5億円(年金7千万円)
(4)出産で退職、再就職しなかった「出産退職型」だと約3・2億円(年金7千万円)
出産をはさんでフルタイムで働き続けた(1)の「継続就労型」と、退職後には働かない(4)「出産退職型」では1・9億円の差がついた。
また、再就職時に、年収は半減するが自ら厚生年金に加入した(2)「再就職型」と、自らは保険料を払わない第3号被保険者にとどまった(3)「パート再就職型」では3千万円の差があった。
妻が専業主婦やパートの場合に夫が受け取れるメリットも算出。配偶者手当(都内中小企業の平均で月1万914円)や配偶者控除分(年7万1千円)を合計しても生涯で約670万円だった。
試算について検討した会議では、「年収の壁手前で就業調整することの目先の利益はすごく大きく見えても、生涯にわたって見るともっと多くのお金を放棄していることが分かる。若い人にはぜひ伝えたいメッセージだ」(小室委員)といった声が上がった・・・
都の資料「東京でのくらし方、働き方について~私たちの思い~」。「報告書」もわかりやすいです。