北村亘ほか著『地方自治論』新版

北村亘、青木栄一、平野淳一著『地方自治論 — 2つの自律性のはざまで 新版』(2024年、有斐閣)を紹介します。2017年に出版された本の、新版です。

この本は、初学者向けに思い切って内容を絞ってあります。確かに、地方自治の歴史や外国の制度などは、専門家には重要ですが、入門書には不要ですね。
他方で、学校教育、子育て行政、高齢者福祉にそれぞれ1章をあててあります。
はしがきによると、法学部や政治経済学部学生だけでなく、福祉や教育学部学生や、公務員や政治家にも読まれているようです。納得。

自民党の派閥、その機能

3月9日の朝日新聞オピニオン欄「派閥という存在」、野中尚人・学習院大学教授の「政権まわす非公式の舞台」から。

・・・自民党でなぜ派閥が続いてきたのか。国会論戦をはじめ、ほぼあらゆる表舞台を避け、派閥を通じて政治を動かしてきたからです。自民党政治はインフォーマルな裏政治なのです。
その特徴は、意思決定のプロセスを隠そうとすることです。国会で質問されてもまともに答えない。政府内の議論も文書を残さず、文書があっても消してしまう。国会や閣議のような公式の場で議論をかわして記録を残すといった、説明責任の姿が見当たりません。

それでも政権をまわすために、もう一つの舞台が必要になります。それが派閥です。カネを配り、ポストを配分し、事前に調整して物事を決め、国会対策までやっている。まさに自民党政治の背骨であり、裏政治を支えています。本当に派閥がなくなれば、自民党は大混乱に陥るでしょう。
岸田文雄首相は、岸田派を解散すると表明しましたが、自分の言ったことが政治に何をもたらすか、意味がわかっていないのではないでしょうか。ただ、表面を取り繕っているだけのように見えます。
自民党リーダーの劣化も、派閥と無縁ではありません。有能さを厳しくチェックされることもなく、有力者に気に入られれば重要ポストを得てしまう。派閥の仕組みはわかっていて永田町ではうまく立ち回るけれど、まったく日本のためになっていない・・・

スイス、傭兵と中立

本の山から発掘され、気が向いたので、森田安一 著『「ハイジ」が見たヨーロッパ 』(2019年、河出書房新社)を読みました。

「アルプスの少女ハイジ」は、原作は読んでいなくても、テレビ漫画を見た人も多いのではありませんか。正しい発音は、ハイジでなく、ハイディだそうです。
宣伝文には、次のように書かれています。
「おんじはスイス傭兵だった――。白パンと黒パン、干し草のベッド、チーズ料理、フランクフルトへの旅、クララの病――子供の頃に夢中になったアルプスの物語には、意外な真実が隠されていた。原作に潜む19世紀ヨーロッパの光と影を読み解く」
このように、この童話を通して、19世紀のスイス社会を解説しています。原作は1880年、まだ100年あまり前のことですが、社会が大きく変わったことがわかります。日本も同じですが。

第2章は「おじいさんの履歴――スイス傭兵制」で、スイスの傭兵の歴史が書かれています。中世から、スイスはヨーロッパ各国への傭兵の供給源でした。たぶん山岳で働く場所が少なかったことが特殊な出稼ぎに向かわせ、山岳育ちで屈強だったことが各国に重宝されたのでしょう。戦前の日本軍でも、田舎の出身の兵隊が強かったとのことです。

そこに、スイスの中立国の成り立ちが説明されています。簡単に言うと、傭兵を要求する各国からの要望に応えるのですが、新教と旧教双方から味方につくようにとの要請を受けて困ります。そこで提案したのが、「スイス国内でそれぞれが傭兵募集をすることは妨げない。しかし国(当時はまだ邦の連合)としては、どちらにも味方しない中立を取りたい」です。各国がこの条件をのんだことから、スイスが中立国になります。なるほど、そのような経緯があったのですね。

京都市の外国人観光客数、50万人から800万人へ

3月18日の朝日新聞夕刊「現場へ!世界遺産の人々1」「京都登録30年、静かな節目」から。

「古都京都の文化財」が世界遺産に登録されて、今年で30周年を迎えます。その課題を追った記事ですが、ここでは、急速な外国からの観光客を取り上げます。
記事によると「統計方法の変更で単純比較はできないが、登録時に年間50万人ほどだった京都市の外国人観光客数は、今や800万人」とのこと。

外国人観光客が増えたなあと感じていましたが、こんなに増えていたとは。京都市民は140万人余り。路線バスはいつも混雑し、迷惑に感じている人も多いようです。
詳しくは記事をお読みください。
世界的観光地になったことはうれしいことですが、住民との共存を考えないといけませんね。

ツバキの花

市町村アカデミーの庭に、去年植えた五色散り椿。人の背丈ほどですが、きれいな花をたくさん咲かせています。ほかの植木と一緒に、係の方が世話をしてくださるのです。小鳥が来て花を食べるらしく、花びらにその痕跡があります。

自宅の鉢植えの五色散り椿は、例年に比べると、今年は花が少ないです。肥料が足らなかったのでしょうか。
玄関脇の紅ツバキは、ちらほらしか咲きません。昨夏の剪定で、切りすぎました。今年は、そのようなことのないようにしましょう。でも、すぐに枝が伸びるのです。狭い空間では、自由に伸ばしてやれなくて。

お向かいの水仙畑は満開です。我が家のチューリップは、葉を伸ばしています。寒の戻りで、桜の開花は遅れそうですね。