3月9日の朝日新聞オピニオン欄「派閥という存在」、野中尚人・学習院大学教授の「政権まわす非公式の舞台」から。
・・・自民党でなぜ派閥が続いてきたのか。国会論戦をはじめ、ほぼあらゆる表舞台を避け、派閥を通じて政治を動かしてきたからです。自民党政治はインフォーマルな裏政治なのです。
その特徴は、意思決定のプロセスを隠そうとすることです。国会で質問されてもまともに答えない。政府内の議論も文書を残さず、文書があっても消してしまう。国会や閣議のような公式の場で議論をかわして記録を残すといった、説明責任の姿が見当たりません。
それでも政権をまわすために、もう一つの舞台が必要になります。それが派閥です。カネを配り、ポストを配分し、事前に調整して物事を決め、国会対策までやっている。まさに自民党政治の背骨であり、裏政治を支えています。本当に派閥がなくなれば、自民党は大混乱に陥るでしょう。
岸田文雄首相は、岸田派を解散すると表明しましたが、自分の言ったことが政治に何をもたらすか、意味がわかっていないのではないでしょうか。ただ、表面を取り繕っているだけのように見えます。
自民党リーダーの劣化も、派閥と無縁ではありません。有能さを厳しくチェックされることもなく、有力者に気に入られれば重要ポストを得てしまう。派閥の仕組みはわかっていて永田町ではうまく立ち回るけれど、まったく日本のためになっていない・・・