スイス、傭兵と中立

本の山から発掘され、気が向いたので、森田安一 著『「ハイジ」が見たヨーロッパ 』(2019年、河出書房新社)を読みました。

「アルプスの少女ハイジ」は、原作は読んでいなくても、テレビ漫画を見た人も多いのではありませんか。正しい発音は、ハイジでなく、ハイディだそうです。
宣伝文には、次のように書かれています。
「おんじはスイス傭兵だった――。白パンと黒パン、干し草のベッド、チーズ料理、フランクフルトへの旅、クララの病――子供の頃に夢中になったアルプスの物語には、意外な真実が隠されていた。原作に潜む19世紀ヨーロッパの光と影を読み解く」
このように、この童話を通して、19世紀のスイス社会を解説しています。原作は1880年、まだ100年あまり前のことですが、社会が大きく変わったことがわかります。日本も同じですが。

第2章は「おじいさんの履歴――スイス傭兵制」で、スイスの傭兵の歴史が書かれています。中世から、スイスはヨーロッパ各国への傭兵の供給源でした。たぶん山岳で働く場所が少なかったことが特殊な出稼ぎに向かわせ、山岳育ちで屈強だったことが各国に重宝されたのでしょう。戦前の日本軍でも、田舎の出身の兵隊が強かったとのことです。

そこに、スイスの中立国の成り立ちが説明されています。簡単に言うと、傭兵を要求する各国からの要望に応えるのですが、新教と旧教双方から味方につくようにとの要請を受けて困ります。そこで提案したのが、「スイス国内でそれぞれが傭兵募集をすることは妨げない。しかし国(当時はまだ邦の連合)としては、どちらにも味方しない中立を取りたい」です。各国がこの条件をのんだことから、スイスが中立国になります。なるほど、そのような経緯があったのですね。