1月31日の日経新聞大学欄に、大竹文雄・大阪大学特任教授の「日本経済の再生 人づくり蛾課題現状維持の誘惑絶つ」が載っていました。「この国のかたち」を変えることの重要性と難しさが分かります。
―教育システムのどこに問題がありますか。
「先進国に必要な人材教育ができていません。先端を走る国々では常に技術革新が起きている。新しいことを考えて挑む人を育て評価する仕組みがあるからです。いまだに日本はそうなっていない。そこに30年以上続く停滞から抜け出せない根本原因があります」
「これを変えるのはすごく難しい。これまで長所だった協調を極端に重視した教育を見直す必要があるからです。高度成長期などキャッチアップの時代には、他の成功モデルを学んで改善すれば、うまくいった。みんなで協力して生産性をあげることが重要だったわけです」
「協調重視の発想が社会に広がり、教育にも浸透しています。幼稚園や保育園の教育でも友人関係や協調性を非常に大事にする。一方で論理的思考や人と違う考えを重視してこなかった。いま大事なのは技術革新を生む発想、間違ってもいいからアイデアを出し試す思考法です。それができる人の育成、失敗を許す教育に転換すべきです」
「悩ましいことに、人口減少と高齢化が変化を難しくしています。新しい発想を認めない、現状でいいという保守的な人が増えていきます。まず、この流れを止めないといけない」
―学校や会社も変わらざるを得ません。
「日本社会には新しいことを許容しない特性があり、行動経済学でいう現状維持バイアス(ゆがみ)が強く働いています。人や企業が変化か現状維持かで迷う場合、変化より現状が必ず良く思えてしまう。このゆがみを除くことで、変化が起きます」