取締役会の前に方針が決まっている

1月24日の日経新聞オピニオン欄、藤田 和明・上級論説委員の「「稼ぐ日立」の原風景、社外取締役との対話が示した成長」から。詳しくは本文をお読みください。

・・・稼ぐ日立へ。世界標準の経営を突き詰めた原風景ともいえる記録がある。約10年前の13年6月。当時の川村隆会長が社外取締役に招いた米スリーエムの元最高経営責任者(CEO)、ジョージ・バックリー氏と対談、日立総合計画研究所の文書に残している。
スリーエムは世界屈指のイノベーション力が評価されていた。バックリー氏は前年から日立の社外取締役を務め、感じた課題をグローバル経営の視点から指摘している。

一つは取締役会のあり方。「取締役会に諮られたとき、その方針が経営によってすでに決まっていたように感じた」。米国なら意思決定前に会社側と取締役会で長く討議する。「戦略的オプションについて詳細な議論を行っただろう」。人ではなく、アイデアで競争すべきだとした。

研究者の収益意識も指摘した。米国では「多くの研究開発資金を集めるには、より多くの利益を上げることが重要と(研究者は)知っている」。研究者も事業の検討会議に出席し、収益性と優れたキャッシュマネジメントを理解すべきだ。利益創出やスピード感が日立には欠けてみえた。
「生み出すべきは新たなアイデアと成長性を兼ね備えた会社」。より速く成長し、より多くの利益を上げる。アイデアの回転数を高め新製品の導入速度を高める。「革新的でなければ、ゆっくりとしかし確実に競争力が低下する」
当時の川村氏が率直に問題意識をぶつけ、バックリー氏が経験で築いた知見で答えるやりとり。日立がその後とった10年改革に重なっている・・