1月13日の日経新聞一面連載「昭和99年 ニッポン反転」は「「総おひとり様」の足音 個つなぐ社会、日本モデル」でした。
・・・身元保証人がいないと入院・入所お断り――。2022年発表の総務省の抽出調査で、一般病院や介護保険施設の15.1%がこう答えた。割合を全国に広げれば「お断り」は約3千施設に及ぶ。高齢者の孤立問題に取り組むNPO法人の須貝秀昭代表(52)は「『家族』が前提の社会を変えないと、命が救えない」と訴える。
戦後、日本の基準は家族だった。1978年の厚生白書には、同居は「我が国の福祉における含み資産」との記述がある。当時は高齢者の約7割が子供と同居し、面倒をみるのが当たり前とされた。80年代には配偶者特別控除や専業主婦の第3号被保険者制度が導入され、家族像が固定化されていった。
同じころ、欧州は経済的苦境から抜け出すため女性活躍にかじを切った。日本と正反対の政策は、共働きを前提とした子育て支援につながり、比較的高い出生率の要因とされる。
京都産業大の落合恵美子教授(家族社会学)は「80年代の経済的成功が改革の意欲をそぎ、家族モデルが固定された。女性の社会進出の遅れは『失われた30年』の要因にもなった」と指摘する。
家族の姿は半世紀で一変した。2020年の国勢調査では単独世帯が一般世帯の38%を占めた。「サザエさん」型の3世代同居は4.1%。家計調査が標準世帯としていた「夫婦と子供2人」は1割を切る。非婚化が進み、およそ3組に1組が離婚し、死別後も長い人生が待つ。迫る「総おひとり様社会」と日本はどう向き合うべきなのか・・・