ダイハツ自動車性能試験不正

昨年12月から、自動車会社のダイハツで性能試験で不正を行っていたことが明らかになり、大きな問題になっています。2022には日野自動車でも排ガス・燃費性能を偽っていたことが明らかになりました。

12月30日の朝日新聞「ダイハツ不正の闇:下」「現場を追い詰める、業界の構図 各社で不祥事、問われる経営」に次のような指摘があります。
・・・「上司や他部署は『スケジュールの遅延は決して許さない』という強圧的な態度だった」
「『できません』『分かりません』は言えず『やるのが当たり前の文化』」
これは今回、大規模な不正が明るみに出たダイハツ工業の話ではない。2022年に排ガスや燃費の性能を偽る不正が明らかになったトラック大手・日野自動車が設置した、特別調査委員会によるアンケートに答えた従業員の声だ。
同年8月に公表された日野の特別調査委の報告書によると、人員や時間が不足するなかで「身の丈に合わない」事業戦略が推し進められ、「開発スケジュールが絶対視」されたことが不正の直接的な原因となったという。
無理な「短期開発」が推し進められ、「『できない』が言えない雰囲気」が組織風土となっていたと第三者委員会が指摘する、今回のダイハツの問題とうり二つの話だ。

失敗が許されず、問題を起こした部署は過剰な批判にさらされる点でも両社の話は共通している。
日野では、ミスを起こした部署や担当者が衆目の中で責められる姿が「お立ち台に上がる」と揶揄されるなど、「パワハラ体質」もはびこっていた。ダイハツでも「『失敗してもいいからチャレンジしよ』でスタートしても、失敗したら怒られる」「担当者が会議でつるし上げられたり、必要以上の叱責を受けたりすることがある」という実態があった・・・

2社ともトヨタグループです。幹部は、トヨタから派遣されているようです。
12月29日の「ダイハツ不正の闇:中」「トヨタの下「来た仕事断れない」 低コストが利点、OEMで増産担う」には、次のような記述もあります。
・・・トヨタには、現地を訪れて実際にものを確認してから物事を判断するという意味の「現地現物」という言葉がある。創業時から大切にされてきたものだ。
ただ、ダイハツの認証試験の現場は、この言葉とかけ離れた状態だった。第三者委の報告書によると、「管理職が多忙で、現場の業務や実情を理解する余裕がなかった」「相談に行っても『どうするんだ』『間に合うのか』と詰問するだけで親身になってくれない」という実態だった・・・

元復興庁職員の集い

昨日17日は、元復興庁職員の集まりに行ってきました。なんと60人を超える人が集まってくれました。
「どのようにして集めたの?」と幹事たちに聞くと、「私が2014年に勤務したのでその当時の人を中心に、知っている人に拡散しました。するとどんどん集まって、放っておくと100人を超えそうでした。会場の都合で、途中で募集を止めました。」とのこと。地方勤務や海外勤務、能登半島地震対応業務で参加できない人もいました。
よくまあ、つながりを発掘してくれたものです。それぞれの班などで同窓会を開いていたようですが、各人がそれぞれに付き合いを続けていて、情報拡散は簡単だったようです。電子メールの威力もあります。
中心になってくれたのは、任期付き職員や非常勤職員だった女性たちです。参加者にも、企業から派遣されていた職員が多かったです。10年ぶりに再開したという人も多かったです。その時期以外の職員も参加していて、その人たち同士では初対面です。

皆さんが「お誕生日おめでとうございます」と挨拶してくれるので、「なんで?」と聞くと、会の名称が「岡本全勝誕生日会」になっていました。ケーキが用意され、ロウソクを吹き消すことまでやらされました。ハハハ・・。でも、そのような名目で集まってくれる人たちに感謝です。まあ、名目とは違って、懐かしい人たちと会いたいということでしょうが。
当時私は、官房長の役割の統括官でした。職員の状況を把握するため、個室に閉じこもらず、みんなのいる場所に行ってしゃべるようにしていました。全員を知っているのは、私だけです。10年ぶりの人も多く、顔は覚えているのですが、「誰だっけ?」です。名刺をもらって、当時の話と現在の状況を聞くと、思い出しました。
その組織で出世した人、既に退職した人、新しい仕事に挑戦している人。結婚した人、再婚した人、子どもさんが生まれた人、それぞれに活躍しています。若い力に圧倒されました。

今回集まった人たちは、復興庁の初期の頃で、苦労を掛けました。しかし、得がたい経験だったようです。
「新しいことができました」「被災地復興のお役に立てて、うれしかったです」「まだ駆け出しの私が、一人で統括官室に入って説明しました。そこで決めてもらいました。企業でもあり得ないことです」「岡本統括官から『35%でよいから持ってこい』と言われて、30%で持って行ったら、『ダメ、やり直し』と言われました」とか。

60数人が入った集合写真を撮りました。私にとっての宝物です。昔ならここに載せたのですが、悪用されてはいけないので残念ながら載せません。
皆さん、ありがとうございました。また、開催しましょう。
なお、会場に「 復興庁OBOG会 能登半島地震募金箱」をこっそり置いたところ、たくさんの募金があったので、現地に送るそうです。あわせて報告します。

在宅勤務で見えない残業

12月29日の日経新聞「休み下手」ニッポン上」に「祝日は多いのに…週末も仕事 在宅勤務 見えない残業」が載っていました。

・・・休日はあるのに仕事に追われてリフレッシュできない。働き方を見直す機運が高まり、制度のゆがみがあらわになってきた。子育てや介護などライフスタイルに応じて働き続けるには、上手に余暇を活用することが欠かせない。「休み下手」な日本の課題を探った。

「平日に有給休暇を使った分、土日で埋め合わせをしないといけない」。都内企業でコンサルタントとして働くさいたま市在住の女性(29)は11月、休日にもかかわらず自宅で業務をこなしていた。プロジェクトの繁閑によるものの、週の大半は在宅で勤務している。
有休は取得しやすいが業務量が減るわけではない。「土日は勤務扱いにはせず、持ち帰った端末でこっそり働く」。繁忙期になると、平日の仕事を減らすために休日に作業することが少なくない・・・

・・・在宅勤務は出社する負担を軽くした半面、仕事と私生活の境目を曖昧にしたとの指摘もある。自宅にパソコンや資料を持ち帰れば、いつでも仕事をできるためだ。
連合の調査では「出勤するよりも長時間労働になることがあった」と回答した人が5割を超えた。深夜に業務した人の割合も32.4%に上った・・・

上司に仕える

上司を使う」の続きにもなります。「上司に仕える」は、「部下を使う」とともに、当たり前のことです。しかし、上司に仕える際にも、その行動に幅があります。

指示されたことを実行するは、最低限のことです。その際にも、早くよい成果物を仕上げるか、時間がかかってできの悪い成果物を出すのか。ここに差が出ます。
次に定例業務であっても、上司は、あなたが知恵を出して創意工夫をすることを期待しています。無駄を省くことなどです。上司は、そこにあなたのやる気と能力を評価します。

そして「仕える」です。
上司の指示に疑問を感じることなく実行するのか、変だなと思ったら意見するのか。上司に指示に欠けている部分を補うのかです。さらに上級になると、上司の行動を予測して、先回りして準備することです。
もちろん、部下がこのような行動を取ることができるのは、上司が部下の意見を聞いてくれる状況においてです。質問をしたり意見を言ったら叱られる、左遷されるような上司の下では、これは期待できません。そして、話を聞いてくれる上司の下で、有能な部下が育ちます。

なおドイツ連邦官吏法には、上司に助言すること、補佐する(支援する)ことが「服従義務」の一つに書かれています。嶋田博子著『職業としての官僚』(2022年、岩波新書)231ページに紹介されています。

「ドイツ連邦官吏法」
第62条 服従義務
① 官吏は、上司に助言し、上司を補佐しなければならない。官吏は、上司の職務上の命令を遂行し、その一般的方針に従う義務を負う。前段は、官吏が特別の法律の規定により、指示に拘束されることなく法律のみに従うものとされる場合には、適用しない。

なお、上司の命令について適法性の疑問がある場合は、それを上司に主張しなければなりません。
第63条 適法性にかかる責任
① 官吏は、その職務行為の適法性について、官吏個人として全ての責任を負う。
② 職務上の命令の適法性に疑義がある場合は、官吏は、遅滞なくこれを直接の上司に主張しなければならない。直接の上司によりその命令がなお維持された場合において、その適法性につき引き続き疑義があるときは、官吏は、一段階上の上司に相談しなければならない。命令が追認された場合には、官吏はこれを遂行しなければならないが、自己の責任を免ぜられる。前段は、命ぜられた行為が人間の尊厳を傷つけることとなる場合又は可罰的若しくは秩序違反であり、その可罰性若しくは秩序違反が官吏にとって明らかである場合には、適用しない。追認は、官吏の要求があれば、文書により行わなければならない。
ドイツ連邦官吏法・原語

「何もしないは得か?」

12月27日の朝日新聞オピニオン欄「「何もしない」は得なの?」、太田肇・同志社大学教授の「組織が個人生かす社会に」から。詳しくは原文をお読みください。

・・・皮肉を込めていえば、いまの世の中、何もしない方が得です。無理をして価値を生み出そうとするより、まわりと調和しながら波風をたてない方がいい。これは個人が組織に適応するための冷静な計算に基づく合理的な行動であり、だからこそ厄介なのです。

典型的なのが古い日本企業でしょう。高度成長期は組織も拡大し、社員の関心も外に向かいましたが、低成長時代に入ると、限られた給与の原資や、役職ポストの配分に明け暮れ、社内で牽制(けんせい)しあうようになる。足の引っ張り合いで、内向きになっています。
長く同じ組織で生きていくのに、へたに突出すれば「出る杭は打たれ」てしまう。失敗は許されず、成功しても大きな報酬が得られるわけでもない。だとすれば、熱心に働くふりをしながら上司の意向を忖度するのが「正解」でしょう。
元来、日本企業のトップは真の実力者ばかりではありません。減点主義の組織をうまく渡った人も多く、その組織でしか通用しない「偉さ」の序列を守ろうとします。時代の変化に対応できず、不祥事の隠れみのにもなりやすい。もはや限界に来ているのです・・・