12月24日の読売新聞、千正康裕氏の「官僚 政治家の道具ではない」から。
・・・官僚が外に出向く時間が取れない最大の要因は、国会対応です。「質問通告」では、国会の各委員会で質問に立つ議員から事前に内容を聞き取り、閣僚らの答弁を準備します。議員の質問通告が前日に届き、深夜残業することも日常茶飯事です。直前にならないと、実際に質問があるかどうかも分からないため、夜に予定を入れることはできません。現場に行きたくても、「行けるかどうか分からない」という前提では面会のアポイントをお願いできないのです。その結果、官僚の情報収集ルートは狭くなります。
国会では、これまでも質問通告の早期化を幾度となく申し合わせてきました。しかし、依然として改善は進んでいません。かけ声倒れに終わらないように、国会の委員会の開催が決定された日時と、各議員の質問通告時刻の公表をセットで行い、可視化する必要があります。官僚は、政治家が目的を達するための道具ではなく、公共財だと考えます。与野党が利害対立を乗り越えて協力し、国会改革を進めるべきです・・・
・・・官僚の業務は、国会対応以外にも増えています。その分、増員されるわけではないので、官僚の「労働密度」はおのずと高まります。こうした環境では、勉強時間が取れません。様々な現場を自分の目で見て、自分の足で歩き、自分の頭で政策を考えることがだんだんと難しくなる。政策立案能力を高めるために、もっと官僚に時間の余裕と裁量を与えるべきです。
そもそも深夜残業が前提の働き方では、自分自身の家族と過ごす時間も満足につくることができません。官僚も今の若手の多くは共働きです。昔の霞が関のように、家事や育児は家族に任せ、夜中までずっと職場にいても大丈夫だという人は少なくなりました。
理想は、ムダな仕事を排し、国会対応も効率化し、政策立案能力に優れた官僚と政治のリーダーシップが融合することです。僕の本意は「官僚に楽をさせてあげたい」のではなく、官僚が担っている政策立案機能は社会的に大切で、その機能が「壊れる」と国民が最終的に困るから止めたいのです・・・