年別アーカイブ:2023年

従業員の性善説とは

2023年7月10日   岡本全勝

6月16日の朝日新聞オピニオン欄「それって性善説?」、田澤由利さんの「在宅勤務 緩やかな柵で管理」から。

・・・「在宅勤務は性善説で」と言われることがあります。25年以上前から在宅勤務の推進に携わってきましたが、性善説での在宅勤務には行き詰まりがあると私は考えています。
「従業員を疑え」という意味ではありません。人は弱い生き物ですから、家にいれば気が緩み、さぼってしまったり長時間労働になってしまったりする従業員はどんな組織にもいます。また、どんなに良い上司でも、部下の様子が見えない状況が続くと「さぼっているのでは」と不安になっても仕方がありません。疑いや不安が蓄積されて起こるのは、出社への揺り戻しです。実際、コロナ禍で在宅勤務を導入したものの、今は「出社せよ」となっている企業は少なくありません。

在宅勤務は、うまく運用できれば素晴らしい制度です。企業は交通費やオフィス代などのコストを削減できる。就職で「在宅勤務ができるか」が重視される傾向があるため、いい人材も確保できる。従業員にとっても、育児や介護や病気の治療など、これまでだったら辞めるか、給料を減らして勤務時間を減らすか、無理のある働き方をするかしかなかった人も、柔軟に働き続けることができます。
問題は、生産性です。「在宅勤務で生産性が落ちた」とよく聞きます。組織は「2:6:2」で構成されているという話があります。自己管理ができてばりばり働く人が2割、普通に働く人が6割、ちょっと困った人が2割。多くの組織に当てはまるのではないでしょうか。ばりばり働く人だけでなく、残りの8割の人もしっかり働けるマネジメントが必要です。

そのために私は「ゆるやかな柵」という考え方を提案しています。「監視」は悪いことのように言われますが、社員の労働時間を把握して適切に管理するのは企業の責任です。在宅勤務でも、会社にいる時と同じような「働いている」「席についている」くらいの「柵」を用意することは、デジタルツールを利用すれば可能です。労働時間を把握して時間当たりの生産性を評価することができれば、だらだら働く人に多くの給料を支払う必要もなくなります。
「在宅勤務だから自由がいい」と思う人もいるかもしれませんが、成果を出そうと過重労働になったり、非効率な働き方になったりすると、企業は在宅勤務をやめてしまいます。企業はゆるやかな柵を用意し、従業員は柔軟でもきちんと働くことが、在宅勤務の正しい運用ではないでしょうか。
「従業員を信じましょう」「従業員に優しくしましょう」という考えでは、必ず甘えが生まれ、職場がぎくしゃくし、長続きしません。必要なのは優しさではなく、適切なマネジメント。性善説ではないのです・・・

日立の改革

2023年7月10日   岡本全勝

日立製作所、私たちの世代には家電製品の印象が強いですが、大きく転換しました。きっかけは2008年、当時最高の赤字を出したことです。そこからの改革と復活は有名です。本にもなっています。
NHKウエッブニュースが、「日立製作所 採用・人事担当者に聞く「モノづくり」から「社会課題の解決」へ 大赤字からの大変革」(7月5日掲載)を載せています。詳しくは記事を読んでもらうとして。

会社が潰れるという危機感から、扱う事業と商品を絞り込みました。記事では、それを3つに整理しています。
1 社会課題解決型ビジネス
2 データ・アナリティクス(データ分析)
3 ジョブ型人事

1については、次のように説明しています。
・・・先ほどの2008年度の赤字をきっかけに、大きくビジネスを見直し、 「モノづくり」から「社会課題の解決」にかじを切ったからです。
少し前まではお客様が自分たちが何を欲しいのか分かっていました。この時速で走る電車が欲しいとか、それに耐えうるモーターが欲しいとか、日立に限らず、どのメーカーも品質の高い製品を競って作るという時代でした。
けれど、いまの時代は何かを作って欲しいではなく、例えば利用者が減って困っているという状況に対して、何ができるかが問われています。
そうです。そのため「単に良いものを作ったら買ってくれる」ではなく、社会が何を求めているかを踏まえたうえでビジネスを展開していくようになったんです・・・

2は情報通信技術の発達によるものですが、1と3は経済成長期になじんだ仕組みからの脱却です。拙稿「公共を創る」で議論している、日本社会の転換に通じます。

タマネギの皮を増やす

2023年7月9日   岡本全勝

立命館大学法学部「公務行政セミナー」講師2」の続きにもなります。
「人生とはタマネギの皮を増やすことだ」という話が、たくさんの学生から反応がありました。皮と言っても、外側にある茶色い薄い皮でなく、内側の食べる部分(鱗茎)です。あの1枚ずつも皮と呼ぶのでしょうが、茶色の皮と区別する際には、なんと呼ぶのでしょうか。

人は、自分が何者であるかを知りたくなります。特に若い人が「自分探し」をします。就職活動に当たって、自分は何にむいているかを考えるときなどです。私は、それは無駄だと助言しています。「ラッキョウの皮をむく」という、ことわざがあります。むいてもむいても皮ばかりで、実がでてきません。若いうちは、経験も少なく、自分が何者かを考えても、よい答は見つかりません。

私も若いときにそのようなことを考えたのですが、ある教育者から「人生とは自己実現だ。その過程だ」と教えられて納得しました。その趣旨を『明るい公務員講座』にも書きました。自己実現は自己発見の過程でもあります。ラッキョウの皮にたとえれば、むいていって芯に何があるのか探すのではなく、タマネギのようにいろんな経験の皮を加えていって太ることでしょう。
自己実現というと、少々難しいです。何が自己かは、人生の終盤にならないと分からないのです。

私の人生を振り返っても、学生時代はもちろん、就職した頃も、現在の私になるとはとても想像がつきませんでした。たぶん、神様もご存じなかったのかも。
神様がその時々にサイコロを振ってくださって、私もそれに応えるべく努力して、さまざまな経験を積んで、今の私ができたのでしょう。タマネギの皮を増やす人生でした。

外国人労働者の受け入れ

2023年7月9日   岡本全勝

6月17日の読売新聞が「特定技能2号 9分野追加 人手不足 外国人材で打開」を解説していました。

・・・政府は9日、外国人労働者の在留資格「特定技能2号」の対象を現在の2分野から11分野に広げる方針を閣議決定した。人口減少と少子高齢化に伴う人手不足が深刻化しており、経済界の要望を聞き入れた。外国人労働者の安定的な受け入れには課題も多い。
特定技能制度は国内の深刻な労働力不足に対応するため、2019年4月に導入された。一定の技能が必要な特定技能1号と、熟練技能が求められる特定技能2号がある。今年3月末時点で1号の在留者は15万4864人。2号の在留者は11人しかいない・・・
・・・特定技能1号取得には原則、日常会話程度の日本語能力の試験と、就業分野の知識・技能に関する試験の両方に合格する必要がある。さらに、就業分野に関する難易度の高い試験を突破して2号に移行すれば永住への道が開ける。
1号の対象分野は12分野。このうち2号の対象分野でもあるのは「建設」「造船・舶用工業」の二つだけだったが、「自動車整備」「航空」「宿泊」「農業」「漁業」など9分野も追加されることになった。1号の「介護」は、長期就労可能な別の在留資格があるため加えなかった。
政府が2号の対象を拡大するのは、制度導入後も続く国内の各業界での労働力不足を踏まえたものだ・・・

・・・来年春以降、1号の労働者らが順次在留期限を迎えるため、経済界などから「熟練技術を持つ人材に引き続き現場を支えてもらいたい」といった要望が相次いだことも政府の判断を後押しした。
2号の対象拡大を巡っては、自民党の保守派などからの反発が予想された。制度を導入する際の議論では、「事実上の移民政策だ」といった声が相次いだためだ。
ところが自民が5月に開いた外国人労働者等特別委員会などの合同会議は、波乱もなく政府案を了承。出席者から2号の対象分野拡大に異論は出なかったという。同委員会で事務局長を務める笹川博義衆院議員は「皆が、人材が不足しているという危機感を持っていた」と振り返った。
2号の対象拡大について、経団連の十倉雅和会長は5日の記者会見で、「日本の生産年齢人口は減少傾向にある中、外国人労働者、特定技能を持った方は非常に重要で、歓迎すべきだ」と語った・・・

政府は「移民政策はとらない」と説明してきたようですが、事実上そして徐々に政策は転換しています。これも、日本型の政治過程と言えるでしょう。

川北英隆先生のブログ

2023年7月8日   岡本全勝

川北英隆先生のブログ、興味深い話や勉強になる話を、書き続けておられます。前にも紹介したことがあります。「日本的思考パターンへの苦言

先生の専門である投資の話「投資にうまい話は絶対ない」や社会批評「銀行窓口の変貌に驚く」も勉強になりますが、なんと言っても楽しみは山歩きの記です。精力的にいろんな山を歩いておられます。

本格的な高山の登山ではなく、近場の歩きやすい山のようです。京都の近くに、こんなところがあるのだと驚きます。私にも、行けそうですが。「湖南アルプス堂山
山の写真とともに、花や木の写真が楽しみです。例えば「虚空蔵山の花」。
京都も暑いそうです。