年別アーカイブ:2023年

復興とレジリエンスの政治社会学研究会

2023年7月15日   岡本全勝

今日、7月15日は、復興とレジリエンスの政治社会学研究会で、東日本大震災の経験を話しました。原田博夫・専修大学名誉教授のお招きで、政治社会学会の活動の一つです。オンラインでした。

専門家の方々なので、質問も高度でした。想定外の危機が起きたときの対応のコツについて、大津波、原発事故、新型コロナでの対応の違いを説明しました。

自殺者2万人

2023年7月15日   岡本全勝

6月26日の朝日新聞「追い詰められる女性たち第2部1」「年2万人「消えたい」と感じさせる社会 清水康之氏に聞く」から。

・・・日本では毎年2万人超が自殺で亡くなっている。主要7カ国(G7)の中で自殺率が高く、女性の自殺者数はトップだ。その背景や自殺対策の現在地などについて、NPO法人「ライフリンク」の清水康之代表に聞いた。

――昨年の自殺者数は2万1881人でした。1日に60人弱の方が死を選んでいます。現状をどうみますか?
2003年に自殺で亡くなる人は、3万4千人と最多になり、06年に自殺対策基本法ができて、その後2万人台まで減りましたが、下げ止まっている状況です。
日本社会に、「死にたい」「消えたい」と思わせるような悪い意味での条件が整っている。この視点を強調して発信し続けなければならないと思っています。

――ライフリンクによる自殺者523人の実態調査から見えてきたこととは?
その多くが「追い込まれた死」でした。自ら死を積極的に選んでいるわけではない実態が見えてきました。その人らしく生きるための条件が失われていたのです。
自殺で亡くなった人は平均で四つの悩みや課題を抱えていた。理由が複合的であることも分かりました。と同時に、じわじわと自殺に向かって追い詰められている。自殺の行為だけでみると瞬間的ですが、そこに追い込まれていく過程をみるという捉え直しが必要なのです。
さらに重要な発見は、職業や立場によって、自殺に追い込まれる状況には一定の規則性があることです。例えば失業者であれば、失業したことで生活苦に陥り、借金を抱え、精神的に追い込まれて自殺に至る。働く人なら、配置転換などの職場環境の変化で過労に陥り、人間関係の悪化も重なりうつになり自殺に至るといったものです。
こうした自殺の典型的な危機経路が明らかになってきました。原因が社会性を帯びているのです。自殺は個人的な問題であると同時に社会的な問題として捉えるべきです。
毎年2万人台前半が自殺で亡くなっています。1年間、この社会をこのまま回していくと、2万人が「もう生きていられない」状況に追い込まれる社会構造とも言えます。

――国内の自殺対策の現在地は今どこになりますか?
10をゴールとすれば、今は5だと思います。06年に自殺対策基本法が施行され、16年の大改正で都道府県と市町村で地域自殺対策計画をつくることが義務づけられました。
市町村単位で自殺者の性別、年代、職業、原因、同居人の有無など細かいデータを把握することができ、それに基づき計画をつくり、関係機関が連携して対策にあたるようになりました。研修も行い、首長がその旗振り役を担うという自覚も生まれています。計画を策定しているのは都道府県すべてですし、市町村も95%にのぼります。
検証も進められ、自殺総合対策大綱が見直される度に地域自殺対策計画策定のガイドラインも見直されることになっており、ようやく日本の自殺対策のPDCA(計画・実行・評価・改善)が循環する状態まできました。
ただ自殺者は下がる傾向とはいえ、2万人台です。まず、課題としては、子どもの自殺の実態解明をして、それに基づき総合戦略を立て、関係機関が連携し、対策を推進する流れをつくらなければいけません。もう一つの課題は、社会全体の自殺リスクを減らすために、社会保障や介護制度など大枠の制度も変える流れに持っていく必要があると思っています。

まだ2万人を超える人が亡くなり、子どもの自殺が増えています。そこの課題が残る5の部分だと思っています。
自殺というのは孤立というより、生きる場所がないということが大きな問題だと思っています。そこにアプローチできる社会にしていかなければなりません・・・

連載「公共を創る」第155回

2023年7月14日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第155回「「生活者省」設置の提言─「安全網」への転換を明確化」が、発行されました。

前回に引き続き、行政の手法の転換を説明します。企画にあっては、先進国に学ぶ「追いつき型」から、国内の課題を拾い上げ対策を考える「試行錯誤型」に変わります。そして、手法は「モノとサービスの提供」から「人への支援」「人の意識への働きかけ」に変わります。また「社会の通念を変える」ということも必要です。

これらを踏まえると、行政の役割は、これまで「社会の先導者」であったものから、「困った人を支える社会の安全網」に変わります。
明治以来の省庁を見ると、富国強兵、生産と公共サービス提供に重点を置いてきたことが分かります。「安全網」への転換を明確にするため、私は「生活者省」の設置を提唱しています。

部門を越えた人事異動

2023年7月14日   岡本全勝

日経新聞「私の履歴書」6月27日、中山譲治・第一三共常勤顧問の「バイオ生産」に次のような話が載っていました。

新薬を発売するにあたり、生産要員の確保が問題になりました。生産要員だけでなくそれ以外の部署でも大幅な要員不足が見込まれました。
しかし、各部門の専門性が高く、人事は別々でした。研究開発と営業の2部門に分かれ、ほとんどが同じ部門で定年を迎えます。他部門への異動は少なく、動いた人たちは、元の部署でのエースではないという偏見すらあったのです。

中山社長は、本社の部門長だけでなく関係会社のトップを集め、「異動に際しては量と質の両方を重視し、エースを出して欲しい。第一三共の未来がかかっている」と訴えます。子会社を吸収合併もします。幹部だけでなく、社員の理解と納得を得るべく、努力します。

東日本大震災の際に、被災者支援本部には、霞が関のほぼすべての省庁から職員を出してもらいました。官邸から指示を出してもらい、各省庁もそれに応えてくれました。ありがたかったです。次に私が考えたのは、この優秀な人たちをなるべく早く各省庁に戻すことでした。彼ら彼女らを引き抜かれて、各省庁は困っていたはずですから。

「公文書を守れ」

2023年7月13日   岡本全勝

月刊誌『文藝春秋』8月号に、「公文書を守れ 高市捏造発言、森友事件を叱る」という座談会が載っています。福田康夫・元首相、上川陽子・元公文書担当大臣、老川祥一・読売新聞会長、鎌田薫・国立公文書館長(前早稲田大学総長)、加藤丈夫・前国立国会図書館長(元富士電機会長)による座談会です。

福田総理が法案作成の決断をした理由、担当大臣に上川大臣を任命した理由などを話されているのも興味を引きますが、本年春の元総務大臣の「捏造」発言や重要裁判記録の廃棄問題、森友学園に関わる文書改ざんなどの近年の問題から、原爆開発や金大中事件、トランプ問題まで、実に幅広く文書に関する話題が取り上げられていて、充実した内容です。
そして、公文書は、国家がいまこうなっていることを説明するための資料だということ、これを作成・管理するのは公務員ですが、それを勝手に改ざんしたり捨てたりすることは言語道断であるとお叱りがあります。
詳細は原文をお読みいただかなければいけませんが、まずはこんな肩書や経歴の人たちが公文書についてこんなに心配していることに、驚きです。確かに国家や社会の仕組みを知り尽くした人たちの視点からみると、公文書の重要性がよく理解されるものなのでしょう。

二点、気のついたことを書きます。
一つは、アーキビストという専門職についての期待です。「自分たちの文書は自分たちが責任を持つ」というのが日本の官僚の基本的な姿勢でしょう。外部の専門家をうまく業務の中に取り込んでいけるのか、現状の風土では難しいと思います。とはいえ、公文書の改ざんや廃棄という問題が続くと、「公務員たち自身に任せておけない」との意見が強くなるでしょう。

もう一つは、これだけのメンバーがいながら、官僚出身者が一人もいません。この分野での役人の発言権が無いこと、発言しようとする者もいないことが、さびしいかぎりです。この対談の中に、実務の面から見た提案や将来像が入っていれば、充実していたと思います。関連した公文書管理の経験者などの発言を期待します。
情報公開法の制定や内閣法の改正、公文書管理法などによって、役人の仕事ぶりがどう変わったか変えられなかったなど実務者としての正直な経験を話したり、あるいは国民との共有の仕方についての提案をしてほしいのです。本来、文書を作り保管している役人こそが、発言と提案をしていくべき分野です。そういう提案ができるような雰囲気を少しづつでも作っていきたいと、わたし自身の問題として思いました。
なお、これに関連したことを、コメントライナー「行政文書は正確か」に書きました。