現実の経済を理解しているのは誰か

12月7日の日経新聞オピニオン欄、ポール・コリアー英オックスフォード大教授「マスク氏と習氏、危うい集権」に、次のような文章が載っています。

・・・私たちの世界は不確実性に満ちている。
経済の統治をめぐり、1970年までを振り返ると「政府こそがものごとを一番理解している」という官僚たちの過剰な自信の時代があった。それが徐々に「市場が一番理解している」という考え方に変わっていった。そして「最高経営責任者(CEO)が一番理解している」という話になった。
政府も市場も経営者も万能ではない。いまは多くの大きな問題について答えが分からないということを受け入れる必要がある・・・

ぎっくり腰顛末記その2

ぎっくり腰顛末記」の続きです。経験してみると、ふだん見えないことが見えてきます。

初期の歩くのが困難なときは、外出先でキョーコさんに手を握ってもらって、杖代わりになってもらったり。こんなに強く手を握ったのは、いつのことでしょうか。ひょっとして初めてかも(笑)。
壺坂霊験記を思い出しました。盲人の沢市が、妻のお里に手を引かれます。浪曲で「妻は夫をいたわりつ、夫は妻に慕いつつ~」というくだりです。壺阪寺は、明日香村の隣の高取町にあります。西国三十三所第6番札所で、私の実家の近所の岡寺は第7番です。子どもの頃、この台詞を聞いて覚えたのでしょうね。

休日に1歳の孫を乗せた乳母車を押して、散歩をしています。1時間半、6キロメートルです。ぎっくり腰で娘の家まで500メートルを歩くのがやっとの時に、これは無理かなと思いましたが、押してみたらできました。痛みがなく、楽なのです。そうです、高齢者が手押し車を押しているのと同じです。

手すりとエレベーターとエスカレーターは、ありがたかったです。でもエスカレーターでは、嫌な思いをしました。
左手が不自由、右足が痛いので、右手で手すりを持って乗りました。東京のエスカレーターは、みんな左側に並んで、右側は空いていたり駆け上る人がいます。「立ち止まって手すりを持ちましょう」と放送しているのですが。2度、駅のエスカレーターで、後ろからせかされたり、すり抜けて追い抜かれたりしました。
「何で右側で立っているのだ」と言わんばかりの表情です。「急いでいるんです」という人もいました。「左手が不自由なのです」と言ったのですが、聞こえなかったでしょうね。自分が不自由になって、そのような人の困りごとが分かります。そのような目で見ると、杖をついている人、必ずしも高齢者でない人も少なからずおられますね。

これから歳を取ってさらに体力が落ちたときの、予行演習でした。反対に、こんなに調子が悪くなったのは、いつ以来かと考えました。子どもの頃は、しょっちゅう熱を出す弱い体でした。ところが就職してからは、大きな病気をすることなく(少しはありました)、健康に仕事を続けることができました。キョーコさんの健康管理によるものですが、元気な体をくれた両親に感謝します。
実はこの前段に、40肩、正確には67肩があったのです。それは次の機会に。

政治家が政策議論を戦わせない、安倍首相の責任

12月22日の朝日新聞「政治とカネを問う」に、御厨貴先生の発言「カネでなく、言葉で政治取り戻せ」が載っていました。この記事は自民党の派閥による裏金疑惑に関してですが、少し異なった視点からの発言部分を紹介します。

・・・政治家が政策について意見を戦わせる、本当の意味での議論をやらなくなって久しい。こうした状況を招いた背景として、私は安倍晋三元首相の責任が大きいと思います。後継者を育てず、長期政権の間にスキャンダルが起きても、選挙に勝つことでチャラにしました。野党やメディアが追及しても明確な答えを与えない。その結果、国会審議も空洞化していきました。

カネではなく、言葉によって政治の力を取り戻さなければなりません。右肩上がりの経済が終わり、人口が減っていく中で、10年、20年先のこの国をどうするのか。そういう議論を政治がもっとすべきです・・・

そういえば、国会での党首討論(国家基本政策委員会)も、最近は開かれていません。

ぎっくり腰顛末記

恥ずかしながら、体の不具合とそれが治った報告です。人様にさらすような話ではないのですが、記録の意味で書いておきます。私以外にもたくさんの方が経験していて、珍しくないようですが。

11月10日朝に突然、ぎっくり腰になりました。講演の旅先のホテルでです。ベッドから起きようとしたら、腰に激痛が走りました。座ったり立ったりは問題ないのですが、歩くのに難渋しました、足を引きずり、ゆっくり歩くのですが、右の腰と太ももが痛いです。
最初の頃は、寝返りを打つのも無理なときがありました。朝起きると筋肉が固まっていて、歩くと痛みが走ります。しばらく歩くと、痛みが小さくなります。じっと座っていると、筋肉が固まります。
講演や旅行もたくさん入れていたので、足を引きずりながら出かけました。その姿を見た人からは「どうしたのですか」と聞かれ、かくかくしかじかと説明しました。毎晩のように意見交換会を入れていたのですが、食事の途中で屈伸運動をして、固まらないようにしたり。

近年は軽い腰痛が出たりしたので、知人の薦めで、朝起きたときの屈伸運動、職場でのテレビ体操と昼休みの散歩、そして休日の散歩をしていたのですが。この程度ではダメだったと言うことでしょう。右腰とともに左肩が痛かったので、筋肉の平衡が崩れてもいたのでしょう。

24歳と39歳の時に、軽いぎっくり腰もどきを経験しました。1度目は徳島県財政課で、交付税の算定で毎日座りっぱなしで仕事をしたときです。2度目は富山県総務部長になって車がつき、高級なソファーに座ったときです。2度とも、歩くことで1週間ほどで治りました。今回も1週間ほどで治ると思っていたのですが、徐々に良くなったものの、なかなか完治しませんでした。

周囲の人にいろいろ聞きました。ほとんどの人は原因不明、痛み止めはあるが治療薬はなし、運動でいつの間にか治ったとのことでした。整体師に4日間で治してもらった人もいましたが、治療は痛くてたまらなかったそうです。で、その治療法は採用せず。
意識的に体を動かすことで徐々に回復し、3週間で9割方治り、4週間でほぼ完治しました。なので、こんなことを書いていられます。この項続く

リスクをとらない日本の経営者

12月6日の日経委新聞経済教室は、岡田正大・慶応義塾大学教授 一條和生・IMD教授の「平成日本企業の失敗 変革導く経営人材、育成急務」でした。
「日本企業と経営者の消極性(リスク回避性向の強さ)が、世界市場における成長機会を看過するという機会損失を生みだした。その解決には、根本的な経営人材の強化・育成が必須だ。」

世界主要27カ国の調査では、日本企業のリスクテイク度は26位、収益性は最下位です。
リスク回避性向の強さは、次のような現象を引き起こしています。
・攻撃的設備投資ができない
・途上国や新興国市場に慎重な戦略しか打てない
・革新的ビジネスへの脱皮ができない、など

それは、企業価値を生み出す能力の低い経営人材が多いからと思われます。スイスのビジネススクールの調査では、シニアマネージャー(上級管理職でしょうか)の国際経験で、日本は64か国中最下位です。多く著名経営者を輩出してきたアメリカのトップ大学で経営学修士号を取得する日本人留学生が、この10年でほぼ半減しています。