「首相補佐官・岡本行夫の記録」

朝日新聞に「首相補佐官・岡本行夫の記録」が連載されています。第2回「サミット誘致、移設前進にらみ 官房長官の名護訪問「是非実現」」(10月5日掲載)が、興味深いです。沖縄の地元の人たちと官邸との両方に信頼関係を作り、難しい問題を望ましい着地点に持って行く。その脚本を書くのです。

・・・ところが11月の知事選で保守系新顔の稲嶺恵一氏が大田氏を破ると、岡本氏は12月7日付の文書で「サミット誘致を取り付ければ再来年の夏までは沖縄が燃え上がる。完全に稲嶺時代を築ける」と強調。2000年に日本で開かれる主要8カ国首脳会議(G8サミット)の沖縄開催を稲嶺氏が率先して政府に要請するべきだと説いた。
文書の送り先は外務省から県庁の知事公室参事に出向していた山田文比古・名古屋外国語大学教授(69)。沖縄サミットは岡本氏の持論で、山田氏も大田県政の頃から誘致責任者を務め、ともに稲嶺県政誕生を転機とみていた。
岡本氏の提案で「サミット誘致県民会議」が実現。
99年4月に小渕内閣がサミット開催地を沖縄に決定。稲嶺氏は11月に普天間飛行場の県内移設を条件付きで認め、政府の方針に沿って候補地を名護市の辺野古沿岸と表明した・・・

・・・政府は12月17日、名護市を含む県北部振興や、普天間飛行場の代替施設の使用協定を名護市と結ぶ方針を表明。岡本氏はその夜、市内のホテルで岸本建男市長と約3時間懇談した。就任2年近くの岸本氏は移設問題への態度をまだ明確にしていなかった。
この懇談の概要を記す岡本氏の文書がある。12月20日付で古川貞二郎官房副長官宛て。岸本氏は「本日の決定には心から感謝。特に使用協定締結の約束には感激した」と述べ、「反対派の巻き返しの力は侮れない。市民を一つにまとめなければいけない」とし、青木幹雄官房長官が名護市を訪れ政府方針を説明するよう求めた。
岡本氏は文書の最後で「普天間移設問題は最も重要な場面を迎えている」と指摘。「(沖縄への根回しが不十分だった)普天間移設の出発点でのボタンのかけ違えを始め、こじれた例は数知れない。『官房長官の(県)北部訪問を受けての市長受け入れ声明』の形は是非(ぜひ)とも実現させていただきたい」と求めた。
岡本、岸本両氏の懇談から9日後に青木氏は名護に入り、岸本氏は翌日に条件付きで移設容認を表明。懇談に市企画部長として同席した末松文信県議(75)は「市長の表明に至るまで、岡本さんと丁寧にスケジュールを組んだ」と話す・・・

東京都立大学法学会記念講演会

今日10月19日は、東京都立大学法学会記念講演会で話をしてきました。「東日本大震災の対応 ~政府と官僚の力が試された

法学会は、教員と学生からなる組織のようです。大杉覚先生のお招きです。
法学部なので、このような内容にしました。大震災からすでに13年近くが経ち、学生たちは記憶が薄いと思います。いつものように当時の写真を基に、私たちが取り組んだ仕事、そこで考えた行政のあり方を話してきました。

岡本正著『災害復興法学Ⅲ』

岡本正著『災害復興法学Ⅲ』(2023年、慶應義塾大学出版会)を紹介します。著者は、東日本大震災以来、被災者支援と被災地復興に携わった経験から、災害復興法学の分野を切り開いた第一人者です。その著作、第3弾です。
新著には、新型コロナウイルス感染症、異常気象という最新の大災害が取り上げられています。内容も分厚く、その執筆ぶりに脱帽します。

かつては災害に関する法律は、政府の側に立った災害対策基本法や災害救助法、国庫負担法などしかありませんでした。「天災だから、あきらめるしかない」という思想がありました。阪神淡路大震災や東日本大震災の経験から、被災者の生活を支援すべきだという考え方が広がりました。そして、被災者の生活を保障することが、当然のこととなったのです。
紹介文には、「災害復興法学は、医療、看護、福祉、公衆衛生、公共政策、事業継続、リスクマネジメント、メディア等の様々な分野と連携しながら、学校教育、社会教育、生涯学習、金融教育、主権者教育、消費者教育、防災教育として、あなたの傍にある」と書かれています。

被災者と向き合う市町村役場職員には、有用な本です。
著者は「法学法律学としては全く事前知識は無用であり、社会人の皆様なら全く難なく読めてしまうと思います」と言っておられます。

アジアで負ける最低賃金

10月17日の朝日新聞に、大倉忠司・鳥貴族HD社長の話「外国人労働者来てもらわないと」が載っていました。
焼き鳥居酒屋チェーン「鳥貴族」は、昨春以降、2度の値上げに踏み切りました。

――値上げの理由は原材料高やエネルギーコストの上昇?
「一番の目的は従業員の給料アップのためです。諸外国に比べて日本の給料は安すぎます。海外の方が稼げると、すし職人など人材が流出しています。物価上昇が進む外国にあわせて、日本もモノの値段を上げていくべきです。もちろん賃上げとセットで」
「外国人労働者にもそっぽを向かれかねません。鳥貴族では、パート・アルバイト従業員の2割が外国籍ですが、もっと時給を上げないと日本に来てくれなくなるでしょう。日本は外国人の雇用を積極的に受け入れていかなければ成り立っていかない。このままでは『失われた30年』が40年、50年になっていくと思います」

栃木県市町管理職研修講師

今日10月18日は、栃木県市町村振興協会主催の管理職研修で、講師を務めてきました。宇都宮市です。
今回は、拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』の内容とともに、最近考えてきたことを話しました。連載「公共を創る」で説明している、日本の職場の栄光と挫折です。かつてもてはやされた日本の職場が、なぜうまくいかなくなったのか。それは、状況と目標が変わったのに、いまだに大部屋主義と引継書で仕事をしているからです。
若い人に、「先輩の仕事を見て覚えろ」は、通じなくなっています。また、一人に一台パソコンが行き渡り、隣が何をしているかわからなくなって、大部屋の教育能力が落ちました。大部屋主義で育ってきた管理職は、部下への指示の出し方、進行管理が上手ではありません。

市町の幹部(栃木県は村がないので)、50人が熱心に聞いてくださいました。中には、「「明るい公務員講座」を専門誌『地方行政』に連載しているときから読んでました」という方もおられて。役に立っていると、うれしいです。

宇都宮では、路面電車を見てきました。ライトレール、LRTと呼ぶそうですが、路面電車の方が分かるでしょう。格好よくて、乗り心地も良かったです。宇都宮の名物になっているようで、乗客にも線路のそばにも、カメラやスマホを構えた人がおられました。