連載「公共を創る」第166回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第166回「政府の役割の再定義ー組織の目標と評価ーそのあるべき姿を探る」が、発行されました。

各行政分野での方向転換を行うため、各省の局長による所管行政の課題と取り組み方針を公表してはどうかと提案しています。局長が発表した事例として、2つを紹介しました。
一つは、 藤井直樹・国土交通省自動車局長(当時。その後に国土交通省事務次官)が、季刊『運輸政策研究』(運輸総合研究所)2016年10月号に寄稿した「自動車を巡る課題―コンプライアンスと技術革新」です。そこには、自動車行政直面している新しい課題が取り上げられています。
もう一つは、吉川浩民・総務省自治行政局長の論文「協調と連携の国・地方関係へ~コロナ禍とデジタル化を踏まえて~」(月刊『地方自治』(ぎょうせい)2022年1月号)です。そこには、局長の体験を基に考えた、地方分権改革から20年間の成果と課題、喫緊の課題では新型コロナ対策で見えた地方行政の課題、自治体の大きな課題である電子化への取り組みが書かれています。

公務員本の分析

季刊『行政管理研究』2023年9月号には、参考になる論考がたくさん載っていますが、すこし趣の異なる研究を紹介します。小林悠太・東海大学講師の「知識労働としての公務:出版市場からの接近」です。

本屋には、公務員を読者と想定した書籍がたくさん並んでいます。それらを「公務員本」と呼び、 その機能や出版状況を分析したものです。
公務員は研究者とは違いますが、業務に専門知識が必要な知識労働者です。そのような専門知識から見ると、知識創造、知識移転、知識共有の場面があり、公務員本は移転と共有に機能を発揮しています。
また、専門分野別知識だけでなく、職場での作法、管理職の知識などもあります。
そして、この研究では、1970年代以降の公務員本の変遷を追っています。

対象として、公務員本の出版点数が多い次の5社を選んでいます。ぎょうせい、学陽書房、第一法規、公人の友社、公職研です。
類例のない研究だと思います。ご関心ある方は、お読みください。

「先の大戦」、内容と名称2

「先の大戦」、内容と名称」の続きです。
読者から、『決定版大東亜戦争』(下)、庄司潤一郎執筆第13章「戦争呼称に関する問題―先の大戦を何と呼ぶべきか」を教えてもらいました。別の著者からいただいていたのが本の山にあったので、早速、その章だけ読みました。

36ページにわたる、詳しい解説です。
当時の政府が大東亜戦争と名付け、占領軍がその名称を禁止したこと。それを避けるために、太平洋戦争という名称が使われ始めたこと。しかしそれでは、それ以前に始まっていた中国での戦争が含まれないこと。左翼系研究者から15年戦争との名称が提起され、その後、アジア・太平洋戦争という名称が生まれたことなどです。
地理的にどこを含むのか、時間的にどこまで含むのか。名称をつけるとして参戦国を入れるのか、戦争目的をどう理解するのか、そして歴史的にどのように位置づけるのか。論者によって意見が異なります。

とはいえ、政府がいつまでも「先の大戦」と呼び続けるのは問題でしょう。しかし、難しいですね。国民や識者に意見の違いがあり、それはそれとしつつ名称をつけるしかありません。それをどのような手順できめるのか。政治的、行政的に類例はありますかね。文科省が検定する教科書での記述が、一つの参考になります。

私はその点で、「新型コロナウイルス」という名称もおかしいと考えています。次に、新しい新型コロナウイルスが広まったときに、どのような名称をつけるのでしょうか。こちらの方は、学者に決めてもらったら良いと思いますが。

奈良県立万葉文化館「飛鳥の祝歌 絹谷幸二展」

奈良に帰った機会に、奈良県立万葉文化館で開かれている「飛鳥の祝歌 絹谷幸二 展」も見てきました。絹谷先生独特の構成と色使いを堪能してきました。

説明には、次のようにあります。
「本展では、絹谷幸二の作品のなかから、奈良の風景を描いたものや、奈良県内各地の『古事記』の伝承地を訪れて制作された大作群、また、奈良の風土が育んだ仏教思想を題材とした作品など、とくに奈良との深い関わりを示す作品を中心に紹介し、絹谷藝術の本質に迫ります。」

万葉文化館は明日香村、古代の宮跡の東の小山にあります。建設時に富本銭の工房が見つかったことで有名です。発掘時のままに残されたか所を、渡り廊下から見ることができます。また、そのための特別展示室もあります。

大阪梅田の「絹谷幸二天空美術館」では、「ヴェネツィア祝歌」が開かれています。

浜松市管理職研修講師

今日10月24日午後は、浜松市で管理職研修に行ってきました。午前中に市町村アカデミーで講義して、昼の新幹線で移動しました。
事前に、参加者から質問や悩みを出してもらいました。すごい数の提出がありました。皆さん、悩んでおられるのですよね。もっとも、本邦初の悩みはなく、いくつかに分類されますが、似通っています。
私自身も職員として悩み、また管理職として悩み、そして同僚や部下が悩むことを見たのですが、乗り越えると「なーんだ、みんな同じことで悩んでいるんだ」と気がつきました。それで、「明るい公務員講座」を活字にしようと考えたのです。

中野祐介市長とも、会ってきました。私が総務省官房総務課長の時、課長補佐として支えてくれました。当時から優秀でしたが、同僚が立派になっていることは、うれしいことです。

昨日今日の2日で、3つの講義講演をこなしました。頭がこんがらないようにするのが、大変です。