閻魔様の予告に気がつかない

先日も紹介した「肝冷斎」。毎日、難しい古典漢文を解説しています。時にはわかりやすく、役に立つものもあります。9月1日の「無常信」から。

(原文) 一老人死、見閻王、答王不早与通信。
(読み下し文) 一老人死して閻王に見(まみ)え、王に早く通信を与えざるを答(とが)む。
(解説と現代語訳) ある老人が死んで閻魔様の前に出た。老人は、閻魔様に「どうして、もっと早くからお迎えがあると教えてくれなかったんじゃ?(心の準備ができなかったではないか、怪しからん)」と文句を言った。

閻魔様はおっしゃった。
(原文) 吾信数矣。汝目漸昏、一信也。汝耳漸聾、二信也。汝歯漸損、三信也。汝百体日益衰、信不知其幾也。
(読み下し文) 吾が信しばしばなり。汝の目漸くに昏、一信なり。汝の耳漸くに聾、二信なり。汝の歯漸くに損、三信なり。汝の百体日にますます衰う、信、知らずそれ幾たびなるやを。
(現代語訳) 「わたしからの通知は何度も行ったと思うんですが。あなたの目がだんだんぼやけてきたのは第一回の通信でした。あなたの耳がだんだん遠くなってきたのが第二回の通信でした。そして、あなたの歯がだんだんぼろぼろになってきたのが第三回の通信。そのほか、あなたの体中、日ごとにますます衰えてきたはずで、わたしの通知は何回あったかさえ覚えてないぐらいなんですが・・・」

続きには、若くして死んだ少年の例が出てきます。関心ある方は、どうぞ。