2023年スペイン旅行3

2023年スペイン旅行2」の続きです。見たところで、印象に残ったところを書いておきます。
史跡や美術館について。
マドリードのプラド美術館は、立派です。大英博物館、ルーブル美術館と並ぶ3大美術館とのことですが、「他の美術館は略奪品で成り立っているが、プラド美術館は王家が買ったものばかり」とのことです。しかもガラスケースに入っておらず、間近に見ることができます。
グレコ、ベラスケス、ゴヤといったスペインの巨匠だけでなく、ブリューゲル、ルーベンス、ラファエロ、ダビンチなどの名品も見ることができます。

ベラスケスの「オリバーレス公伯爵」も見てきました。このホームページでも何度か登場した、フェリーペ4世のスペインを支えたオリバーレス公伯爵です。2017年アメリカ旅行の際にメトロポリタン美術館で見たものと、2022年の国立新美術館の「メトロポリタン美術館展」で見たものは同じものです。それと同じ構図ですが、よく見ると、プラド美術館の馬が茶色で、メトロポリタン美術館のは白のようです。

建物について。
バルセロナのサグラダ・ファミリアは、圧巻でした。言葉では表しにくいので、見に行ってください(これでは説明になりませんね)。7月に近代美術館での展覧会やNHK特別番組で知識を仕入れていったので、よりわかりました。
2026年には完成すると言われていましたが、案内人の説明によると、歴史を紹介した展示に先頃まで書かれていたその言葉が、いつの間にか消えたそうです。
100年かかっているのですから、急ぐことはありませんよね。しかも、工事が進んだのは、1990年代以降拝観客が増えて収入が増えたこと、2010年に教皇ベネディクト16世が訪れるに際して工事を進めたからだそうです。

バルセロナでは、カタルーニャ音楽堂もよかったです。ガウディのお師匠さんの設計と意匠で、1905年にできています。サグラダ・ファミリアと共通する、くねくねと曲がった意匠(アールヌーボー)が奇抜です。

アルハンブラ宮殿も良かったです。トレド、コルドバ、グラナダなど、中世が残っているような街も良かったです。

関東大震災時の内務省の記録

9月5日の朝日新聞に「関東大震災時の朝鮮人虐殺、神奈川での記録見つかる 被害者名も記載 知事から内務省局長あて報告書」が載っていました。

・・・1923年の関東大震災での朝鮮人虐殺について、神奈川県が事件をまとめたとみられる資料が見つかったと虐殺の歴史を調べる地元団体が4日、明らかにした。県内で起きた朝鮮人への殺傷事件59件の概要のほか、殺害された計145人のうち14人の名前も記載している。
資料は23年11月21日付で、当時の安河内麻吉・神奈川県知事から内務省警保局長にあてた報告書とみられる。「震災に伴う朝鮮人並びに支那人に関する犯罪及び保護状況その他調査の件」と題されている・・・

関東大震災時の虐殺事件自体が大きな問題ですが、ここで取り上げたいのは、そのような資料を当時の県庁が作り内務省に報告していたこと、そしてその記録は多分、内務省警保局を引き継いだ警察庁や公文書館に残っていないであろうことです。
敗戦後に、内務省がたくさんの資料を燃やしたことは報告されています。責任追及を恐れてのことですが、貴重な資料を失ってしまいました。

少子化は個人でなく社会問題

8月20日の読売新聞に、猪熊律子・編集委員の「少子化 個人でなく社会問題」が載っていました。参考になります。原文をお読みください。

今後50年の間に人口が毎年平均80万人近く減少するとの将来予測に、「静かなる有事」といわれる少子化がいよいよ「牙をむき始めた」との指摘がある。危機感を強めた政府は「異次元」の少子化対策として、6月に給付拡充策を公表したものの、国民の間に理解が広がっているとはいえない状況だ。少子化の本質とは何か。改めて考えてみたい。

「日本の参考になるのでは」と関係者の間で注目されている政策がある。スウェーデンの経済学者、グンナー・ミュルダールが1930〜40年代に唱えた「予防的社会政策」「消費の社会化」がそれだ。
どんな政策か。
ミュルダール研究で知られる藤田菜々子・名古屋市立大教授によると、スウェーデンでは30年代に出生率が欧州で最低水準にまで落ち込み、「このままではスウェーデン人が消滅する」との危機感が強まった。
国力増強の観点から人口増を求める保守派は、出生率低下は個人主義的エゴイズムのせいだとして、独身者・無子夫婦への課税や、避妊具の販売禁止などの反・産児制限策を主張。一方、出生率低下は生活水準の向上につながると見る社民党支持者は、産児制限を推奨する「新マルサス主義」を支持。国を二分する論争に、第三の道を示したのがミュルダールだ。

彼は、出生率低下の原因は「個人ではなく社会構造にある」と喝破。従来、子どもには「老親の扶養」「労働力の担い手」などの役割が期待されたが、公的年金制度が導入され、女性の労働市場進出も進む中、子を持つことによる経済的負担が増し、個人の選択としては回避すべきものになったと指摘した。しかし、国が出生を強要するのは民主的国家にそぐわないと、保守派を批判した。

個人から見れば合理的な経済行動ともいえる出産回避の「個人的利益」は、国の存続や経済持続などの「集団的利益」と対立する。しかし、公的年金制度の廃止などは現実的ではない。解消策としてミュルダールが提唱したのが、個人の選択の自由は認めつつ、出産・育児に伴う障害を事前に取り除く「予防的社会政策」だった。出産などを理由とした解雇を禁じる政策や、出産手当、育児休業、保育サービスなどがこれに当たる。
対象はすべての子で、子どもにかかる費用は社会全体で賄うこの政策は「消費の社会化」と呼ばれた。子どもへの支援は「人的投資」として本人の生活を豊かにし、労働生産性の上昇を通じて、経済の成長・発展にもつながる・・・

2023年スペイン旅行2

2023年スペイン旅行1」の続きです。
読者から、「大変でしたね」「途中着陸の話に、大笑いしました」「続きを期待しています」との反応をもらいました。幸いなことに、期待している方には残念なことに、その後は大きな問題はありませんでした。

参加者12人、添乗員1人の団体旅行です。皆さん良い方で添乗員さんも素晴らしく、楽しい旅行を過ごすことができました。私たち夫婦に近い年齢の方が多く、無理をしない行動でした。
ただし、行程は欲張ったもので、かなりきつかったです。すでに記憶が曖昧になっていますが、忘れないために書いておきます。
8月31日 朝に羽田発、深夜にマドリード着
9月1日 プラド美術館と市内観光。トレド観光
2日 マドリード発、新幹線でコルドバへ。メスキータ、ユダヤ人街など市内観光。セビリアへ。夜、フラメンコショー
3日 アルカサール、ピラトの家、カテドラル、スペイン広場など。グラナダへ
4日 アルハンブラ宮殿。ミハス(白い村)、マラガから飛行機でバルセロナへ
5日 サグラダ・ファミリア、グエル公園、カタルーニャ音楽堂
6日 早朝にバルセロナ発
7日 朝に羽田着

スペイン北部は行きませんが、広い国内を、飛行機、新幹線、バスで移動します。8日間とはいえ、現地活動は実質5日間です。スペイン通に聞くと、「2週間のところを1週間で回ったのですね」とのこと。

時差は、体に来ますねえ。歳を取ったら鈍くなるかと思いましたが、変わりません。長時間の飛行は、事前に想像したより、きつくなかったです。心配だったので、お酒を控え目にし、食事も軽めにしました。
食事は・・・。若いときは、機内食も現地の食事も楽しみでしたが。団体行動ですから、ゆっくりと楽しむ食事にはなっていません。個別に食事を楽しむなら、数時間かかりますよね。
日本の食事が、和食・洋食・中華を含めて一番おいしいです。帰国するなり、キョーコさんが「日本が一番」と言って、料理に腕を振るっています。旅行好きの知人には、羽田や成田に着くなりコンビニに飛び込んで、おにぎりを食べてほっとする人がいるとのことです。

連載「公共を創る」第161回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第161回「改革は「できるもの」─私の経験」が、発行されました。

前回まで、官僚の失敗事例を取り上げ、そこには新しい課題への対応が遅れていることと、それまでの政策の転換うまくできていないことを指摘しました。
私は若い頃から、おかしいと感じた仕事の仕方や内容を、おかしいと指摘するだけでなく、どうしたら変えることができるかを考えてきました。官僚の多くは、私と同じことを考えているでしょう。とはいえ、そう簡単に変えることはできません。

今回は、私がやってみた「改革」をいくつか紹介します。
それぞれに難しいことでしたが、関係者の理解や社会の動きが、背中を押してくれました。すべてうまくいったわけではありませんが、「やってみたら、できた」こともあるのです。