サヘル諸国地方行政能力強化研修で講義

今日は、国際協力機構(JICA)の「サヘル諸国・周辺国における地方行政能力強化による政府と住民間の信頼醸成」研修の講師に、JICA東京本部(幡ヶ谷)に行ってきました。
サヘルとは、サハラ砂漠南縁部に広がる半乾燥地域で主に西アフリカです。報道では、クーデタが頻発しています。今回の参加国は、 チャド、コートジボワール、マリ 、ブルキナファソ、モーリタニアの5カ国。その地方行政機関・地方政府を監督する中央政府機関職員9人が相手です。ニジェールはクーデターで、参加できなくなったそうです。

資料はフランス語に翻訳してもらい、通訳を通しての講義です。第二外国語はフランス語だったのですが、その後目にすることもなく、すっかり忘れています。
投影資料は写真が主で、骨子に基本的なことを書いて渡してありますから、通じたと思います。質疑応答は、熱心でした。質問は災害復旧に限らず、日本社会などについてと幅広でした。

何もなくて当たり前

9月10日の読売新聞、石浜友理・社会部主任の「「何かある」を探し「何もない」を敬う」が、考えさせる主張でした。

・・・新聞記者は「何かある」と忙しい。社会部の場合、大きな事件事故や災害が起きると、チームを組み、休日返上で取材に奔走する・・・
社会に伝えるべき情報はあるか。特ダネはどこに——。記者はいつも、「何かある」を追い求めている。

そうした心持ちで仕事を続けてきたため、皇室取材を担当した時、「何もない」ことに至上の価値を置く人たちと出会い、カルチャーショックを受けた。皇室の護衛や皇居の警備に当たる皇宮警察の護衛官である。
平成時代の2013年10月の園遊会は忘れられない。在位中の上皇ご夫妻の様子を取材していると、突然、招待されていた国会議員の一人が上皇さまに手紙を差し出した。「何か」が起き、前代未聞の事態に報道陣は騒然となった。手紙は原発事故の現状などを訴えるものだったとされ、この議員は国会で「天皇の政治利用」と批判を浴びた。
実はこの時、皇宮警察にも「そばにいた護衛官が阻止すべきだったのでは」と厳しい意見が寄せられていた。もし危険物だったら取り返しがつかなかったとの声も。「何もないこと、何も起こさせないことが我々の仕事だ」。そんな皇宮警察幹部らの自戒を込めた言葉を聞き、彼らの中に記者とは逆の行動原理があることに気付いた。

この原理は警察当局に限らないようだ。今夏、コロナ禍で4年ぶりに花火大会を開催した主催者からも同じような言葉を聞いた。
東京都足立区の花火大会は、雑踏警備の態勢を大幅に強化し、大過なく終了。区観光交流協会事務局長の坂田光穂(みつお)さん(62)に「100点満点でしたね」と水を向けると、こう返された。「いや、ゼロです。何か起きればマイナスに引き算されるが、何もなくて当たり前だからゼロ」・・・

弱者に徹底して優しい国

9月7日の朝日新聞オピニオン欄、鈴木幸一・インターネットイニシアティブ会長の「ネット敗戦の理由」から、いくつか気になった部分を紹介します。私には、引用した最後の段落が最も気になります。ただし、「日本が弱者に徹底して優しい国」というのは、留保が必要です。声の大きな弱者には優しいのですが、このホームページ「再チャレンジ」の分類で取り上げる弱者にはとても冷たい国です。

・・・インターネットの時代が訪れて、はや30年。その間に創業したグーグルやアマゾンなどは、今や世界を席巻するガリバー企業だ。日本には、なぜそうしたビッグテックが育たなかったのか。「ネット敗戦」とも言われる我が国の現状について、「日本にネットを創った男」鈴木幸一さんは、いま何を思うのか。
――日本初のインターネット接続事業者(プロバイダー)としてIIJを設立してから、もう30年も経つのですね。
「ネットは20世紀最後の巨大な技術革新であり、世界を変える。その変化のイニシアティブ(主導権)を我々が取るのだ、と気負った思いを社名にこめました。当時の日本社会には、どこにもそんな認識はなかった。当局は通信事業者としての厳しい条件を課してくるし、民間企業の理解もなく、私は出資を求めて説得と金策の日々。1年以上も八方ふさがりの状況でした」
「そのころ米国では、すでにUUNETという世界初の商用プロバイダーがサービスに乗り出していました。日本もそれに遅れまいと、なんとか世界の2番手で本格的なサービスを始めたのは1994年の春でした」

――当時掲げた夢や目標は、実現できましたか。
「高い技術力で日本企業のネット化を先導し続け、売上高も3千億円近くになりました。ただ、設立後7年足らずで米ナスダック市場に株式公開し、世界企業をめざした勢いからすると、どうなのかなあ。アップルやグーグルなどGAFAと呼ばれる巨大IT企業の急成長を横目にすると、なぜ、という思いが頭から離れません」

――日本は米欧や中国に立ち遅れ「ネット敗戦」状態です。なぜこんなことに?
「ネットが国防予算で成長した軍事技術、国家戦略だという視点が、平和に慣れた日本では希薄でした。文化の違いも大きい。ネット事業というのは、法制度的にはグレーゾーンだらけです。検索ビジネスもユーチューブも、著作権法を厳密に考えたら微妙な点も多い。それでも米国の事業者たちは訴訟の山になることを覚悟し、乗り越えながら突き進んできました。それと対極なのが日本社会です」

――グレーゾーンの受け入れの可否が、日米の実力差につながったということですか。
「もっと深刻な問題があります。一つは日本ではプライバシーに神経質になりすぎること。さらに日本が弱者に徹底して優しい国だということです。IT化が進むと、まず使えない弱者に配慮し、IT化を遅らせたり昔ながらの仕組みを残したりする。二つの社会インフラが必要でコストが高くなり、遅れた仕組みもそのまま残ってしまう」・・・

遅れを取り戻す

約1週間、海外旅行をしたので、いろいろと仕事が溜まっています。

連載「公共を創る」は書きためていたので、締め切りには遅れなかったのですが、その後の原稿の準備ができていません。右筆の助けを得て、15日締め切りは乗り切りました。でも、すぐに次の締め切りが来ます。
講演のお誘いが次々と入り、引き受けるのは良いのですが、その準備も必要です。

新聞に目を通すのが大変です。帰国して数日かけて、たまった新聞から、読みたい記事が載ったページを破りました。8日分、3紙となると、結構な分量でした。
それを、行き帰りの通勤電車の中で読んでいます。他方で、毎日新しい切り抜きもたまり、在庫が減りません。まあ、遅くなっても、読まなくても大きな問題はないので、焦らないことにしましょう。

猛暑の間避けていた、夜の異業種交流会も復活です。なかなか余裕は出ませんね。

外国人向け認可外施設

8月28日の朝日新聞に「外国人向け認可外施設、足りぬ「保育士」 日本の資格者確保 無償化の条件、滋賀県が緩和訴え」が載っていました。現行制度から漏れ落ちる人を、どのように拾い上げるか。原文をお読みください。

・・・約1万人のブラジル人が暮らし、製造業を支える滋賀県。外国籍の子どもたちの受け皿となっている認可外保育施設が、国の幼児教育・保育の無償化の基準見直しを訴えている。条件となる「日本の保育士資格を持つ職員」の確保が難しいためだ。外国人向けの保育施設が多い全国の自治体も、同じ事情を抱える。

滋賀県愛荘町のブラジル人学校兼保育施設「サンタナ学園」。1998年、日系2世の中田ケンコ校長(66)が始めた。保育施設には現在、0~5歳のブラジルやフィリピンの外国籍の子どもたち22人が県内8市町から通う。
2019年10月から始まった幼保無償化。認可外保育施設が対象となるには、保育士資格者の数や、子ども1人あたりの保育室の面積など、国の一定の基準を満たす必要がある。ただし、来年9月末まで5年間の猶予期間が設けられた。
学園では4年前から日本人スタッフが働き、日本語で書類作成をするなど基準を満たす努力をしてきた。しかし今秋行われる施設への立ち入り調査で、基準を満たせる見通しは立っていない。
最も高いハードルが、日本の保育士資格を有する職員を確保することだ。中田校長は「言葉の問題から、ブラジル人が日本の保育士資格を取るのは難しい。25年間続けてきたが、無償化が打ち切りになれば非常に厳しい」と話す。
学園に通う子どもや保護者の大半は、日本語が不自由だ。保育士には、ポルトガル語やブラジル文化の理解が欠かせない。ブラジルの教員資格を持つ職員が数人いるが、日本の保育士資格を持つ職員はパート1人。学園の規模では、最低2人の保育士が常勤勤務する必要があるという・・・