80億人を狙う日本の米菓

8月15日の読売新聞「LEADERS」は、亀田製菓会長兼CEOであるジュネジャ・レカ・ラジュ氏の「日本の米菓 80億人に狙い」でした。

<微生物学が専門で、1984年に大阪大学の研究生として来日した>
当時、(米経済誌)フォーブスの経営者リストを見てもみんな日本人。メイド・イン・ジャパン。日本はアメリカを抜いて世界一になるのではないかという勢いがありました。インド人の留学先はアメリカやヨーロッパが多かったのですが、ある先輩から「これからは日本ですよ」と言われました。阪大には発酵工学の分野で世界トップクラスの有名な先生がいたこともあって、日本に行く決心をしました。

日本で一番驚いたのは食でした。
インドってスパイスの味、濃い味付けですよね。先生と食事に行ったらタコの刺し身が出てきた。何も調理しないでこんなものを食べるのかと本当に驚きました。そうしたら先生から「形を考えないで、とにかく口に入れておいしさを感じなさい」と言われたんですね。
「食感」という言葉は後から知ったのですが、日本語には食感を表す言葉が本当に多い。調べてみると「かりかり」とか「ぱりっ」とか445語もある。英語は77語しかない。食に対して日本人は繊細ですよね。ずっと食にかかわってきた私のキャリアで、一番記憶に残っている言葉です。

<海外事業、国内の食品事業担当の副社長を経て、22年に会長兼CEOに就任した>
亀田の柿の種という国民的なお菓子を作っている会社のCEOになったことは本当に誇りに思っています。
もっと言うと、日本国民1億人だけではもったいない。世界の80億人を狙っていこうと思っています。

今、外国人が日本に来て何に喜んでいるでしょうか。食ですよね。和食は目で見て美しく、おいしい。私たちはコメからいろいろな食品、食感を作ってきました。小麦アレルギーの子供も食べられる特定原材料等28品目アレルゲンフリーの米粉パン、お米由来の植物性乳酸菌、災害食用の携帯おにぎりなどです。

柿の種は知られていても、こういう亀田は知られていない。全部ドット(点)、ドットなんです。
どうやってドットをつなげるか。まずは社員のマインドセット(考え方)を変える必要があります。7月にグループの研究開発機能に横串を刺す「グローバル・ライスイノベーションセンター」を作りました。ドットをつなげていったら、すごいパワーになりますよ。

寛容とは

8月15日の日経新聞オピニオン欄、小竹洋之コメンテーターの「終戦の日に考えたい寛容 価値の分断越えるリアリズムを」から。詳しくは原文をお読みください。

・・・第2次世界大戦の終結から78年。私たちは「パーマクライシス(永続的な危機)」とも「ポリクライシス(複合的な危機)」とも評される時代に行き着いた。
地政学、経済、地球環境などの危機は、そろって長期化の様相を呈する。しかも複数の危機が共鳴し、個々のリスクの総和を上回る惨事に発展しかねない。

権威主義国家が生み出す安全保障上の危機は、とりわけ深刻だ。ロシアのウクライナ侵攻は1年半に及び、中国による台湾制圧の危険さえ迫る。核開発に動く北朝鮮やイランなどを含め、世界の「火薬庫」は四方八方に広がる。
これに対抗する民主主義国家もほめられたものではない。新型コロナウイルス禍やインフレで痛手を負った米欧の内向き志向は強まり、自国第一の政治が幅を利かす。人種や性、学歴などを巡る社会の分断も深まる一方だ。
米人権団体のフリーダムハウスが世界195カ国・15地域の自由度を算定したところ、「悪化」の数は「改善」を17年連続で上回った。権威主義の伸長だけでなく、民主主義の劣化がもたらす危機も憂慮すべき状況である。
民主主義を意味するギリシャ語の「デモクラティア」は、デモス(民衆)とクラティア(権力)の造語とされる。米国のトランプ前大統領をはじめ、抑圧的で排他的な指導者が助長した権力のゆがみは看過できない。だが彼らの台頭を許した民衆の緩みにこそ、本質的な問題があるように思う・・・

・・・私たちはどう振る舞うべきか。「不寛容論」などの著書で知られる東京女子大学の森本あんり学長(神学者)に尋ねてみた。
「寛容というのはきれい事ではない。自分とは異なる人、自分が否定するものを、渋々受け入れるところに本来の姿がある。不寛容の存在を認めない姿勢や、周囲に関心を持たない無寛容の姿勢から、真の寛容は生まれない」
「勝者が敗者をぎりぎりまで追い詰めず、カムバックのチャンスを残しておく。それが民主主義のありようではないか。アイデンティティーや価値観の問題に踏み入ると、徹底的に戦おうという方向になりがちだが、理想を性急に追いすぎないのが賢明だ」・・・

親から連鎖するスポーツやボランティア

8月17日の朝日新聞夕刊に、「体験「格差」、親から連鎖 スポーツやボランティア、年収だけでなく」が載っていました。

・・・音楽やスポーツ、美術鑑賞などの体験活動に参加していない子どもの保護者もまた、幼少期にそうした経験が少なかったことが、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(CFC、東京)の調査で分かった。世代間で「体験格差」が連鎖している実態が浮かび上がった。

調査は昨年10月、インターネット上で行い、小学1~6年の子どもがいる世帯から2097件の回答を得た。スポーツやピアノなどの習い事や、キャンプやボランティア、観劇といった単発での体験などをまとめて、学校以外の時間に行う「体験活動」と定義した。
世帯年収で比べると、年収300万円未満の家庭の子どもは、3人に1人が直近1年で体験活動を何もしていなかった。年収600万円以上の世帯では約10人に1人だった。

低所得世帯の中でも、「親の経験の有無」で大きな差があった。世帯年収300万円未満で、保護者が小学生の頃に体験活動に参加していなかった家庭では、直近1年以内に体験活動がなかった子どもの割合は58・1%にのぼった。保護者に体験活動の経験があった家庭では、17・4%にとどまった。
世帯年収と保護者の幼少期の体験活動についても調べた。小学生の頃に体験活動をしていない保護者の割合は、年収が高くなるほど少なかった・・・

これは、私の体験からも、実感します。

『中世ラテン語の辞書を編む 100年かけてやる仕事』

中世ラテン語の辞書を編む 100年かけてやる仕事』(2023年、角川ソフィア文庫)を本屋で見かけて、買いました。「このような内容の本を読んだことがあるなあ」と思い、目次を見て、ぱらぱらと目を通しました。「読んでなかったか。じゃあ買おう」と決断。

読み始めると、記憶が戻ってきました。「やはり読んだはずだ」。で、このホームページで検索してみると、出てきました。「100年かけてやる仕事
内容のほとんどは忘れていました。まあ、「2度読んだのだ」と思えばよいのですよね。

このような本は、私の分類では、「貯蓄の読書」か「消費の読書」に当たります。よしとしましょう。「生産の読書、消費の読書、貯蓄の読書

日本社会の大企業志向

8月14日の朝日新聞夕刊「大企業志向――技術あるのにスタートアップ低調な日本 起業ノウハウ学ぶ場、もっと」から。

革新的な技術やビジネスモデルを伴って起業し、短期間で急成長するスタートアップ(新興企業)が、日本では育ちにくいとされる。かつては「ものづくり大国」と言われた日本で、何が問題となっているのか。日本通のベンチャーキャピタリスト、アニス・ウッザマン氏(47)に聞いた。

――日本のスタートアップを取り巻く現状は、世界各国と比べてどんな課題がありますか。
日本政府によると、日本には現在、約1万社のスタートアップがありますが、世界のスタートアップのうち、1割以下という少なさです。数年前に比べれば増えていますし、人々の認知も広がったと思いますが、グローバル水準で見たとき、スタートアップやイノベーションのハブになれるかというと、あと一歩足りない。シリコンバレーやイスラエルのような地位をアジアの中で築いて欲しいです。

――そうはいっても数年前と比べて日本でスタートアップが増えてきた背景には何があるのでしょうか。
政府の政策だと思います。日本経済復活のため、イノベーションが大事ということを政府が悟り、シリコンバレーの状況を研究するなどしてきたからだと思います。それに合わせて一部の大学も活発に動き始め、イノベーションやアントレプレナーシップ(起業家精神)関連のプログラムが行われたり、大学発のファンドができたりしています。

――政府が支援に力を入れ始めたのは日本経済に対する危機感の表れなのでしょうか。
そうでしょうし、国が支援する方向性は正しいと思います。日本の技術者には十分ポテンシャルがあります。私も東工大にいたことがあるので、日本の研究や技術のレベルの高さは知っています。ただし、そうした深い研究などが実用化されたり、法人の設立まで至らなかったりしているのが課題です。実用化や法人化にはビジネスのアイデアや知識が必要ですが、日本では技術者がそういったことに触れる機会が少なく、結局、大企業に就職する傾向があると思います。