日経新聞夕刊連載「人間再見」、8月7日からは、外国人支援NPO代表の鳥井一平さんの「彼ら彼女らも日本で働く同僚です」でした。
・・・日本の在留外国人は2022年末に307万人と30年前の2.4倍に増えた。NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平・共同代表理事(69)は30年以上にわたり、労災や賃金不払いなどのトラブルに遭った外国人労働者を支援してきた・・・
記事には、日本企業が外国人労働者を虐待する事例が載っています。次のような記述も。
・・・91年に千葉県野田市で業務中に大けがをしたバングラデシュ人の青年から、会社が労災申請してくれないという相談がありました。主治医に状況を聞こうと訪れた病院で驚きました。包帯をした外国人が待合室にたくさんいるんです。大変なことが起きていると実感しました。
当時、中小零細企業で働く人は「弁当とケガは自分持ち」と自嘲するくらい、労働災害に遭っても泣き寝入りする状態でした・・・
・・・90年代に観光ビザで来日し成田空港に降り立った人々は、付近の町工場のドアをコンコンたたいて「仕事はありませんか」と尋ねて回ったのです。本来は就労できない資格なのに企業が雇うのは、彼ら彼女らなしではこなしきれないほど仕事があったからです。
路上で警察官の職務質問を受けてオーバーステイだと判明しても、工場の社長が交番まで走っていって「連れていかれると工場が止まってしまう」と訴えれば放免される。おおらかな時代でした。
93年には約30万人のオーバーステイ労働者がいました。入管当局が「本気」で取り締まれば、これほどの規模になることはありえません。日本経済を支えるため政府が「不法就労」を実質的に容認していたのが実態なのです。
23年6月に出入国管理法が改定され、非正規滞在者の強制送還が強化されました。私たちはずっと反対してきました。「不法滞在者」を送還して何が悪いんだと考える人もいるかもしれませんが、かつて政府はオーバーステイを黙認し、彼ら彼女らが日本経済を支えてきた面があるんです。そうした経緯を踏まえた議論が必要です・・・