6月15日の日経新聞夕刊に「他人の配偶者を何と呼ぶ 「妻さん」「夫さん」悩ましく」が載っていました。
他人の配偶者を何と呼ぶか。記者が取材するときにも悩ましい問題だ。上下関係がにじむ「奥さん」や「ご主人」を使いにくいと感じる人は多い。だが、「妻」「夫」は相手には使えない。そこで「妻様」「夫様」という新語も出始めている。男女を限定しない「パートナーさん」や「お連れ合い」が広がる可能性もある。変化の現場を追った。
日経xwomanの2021年の調査では、他人の男性パートナーの呼び方では「旦那さん」が47%、「ご主人」が24.4%と多く、「夫さん」は7.3%。女性パートナーでは「奥さん」が73.8%と圧倒的に多く、「妻さん」はわずかに1.8%だ。
夫婦への接客が多い営業の現場はどうだろう。
積水ハウスでは「奥様、ご主人は使わず、何と呼べばいいか尋ねるケース、お名前で呼ぶケースがある」(広報室)という。京都の中村さんのお願いを先取りした形だ。また「目を見て話せば分かるので、あえて呼称を使わないこともある」。アンケートの続柄欄には「パートナー」を加える工夫もしている。
三越伊勢丹ホールディングスでは「お連れ様という呼称を使う場合もある」(広報・IR部)。社内では「ユニバーサルマナーのハンドブックを定めて呼称だけでなく接客レベルの向上に努めている」という。
全日本ホテル旅館協同組合の中村克次事務局長は「現場に指導しているわけではないが、個人的には男女の性別に関係なくフラットに使える『ご家族の方』がいいと思う」と話す。脱「奥様・ご主人」の動きは広がっているようだ。
「ご主人」への違和感を訴える声は昔からあった。有名なのは戦後間もない1955年に行われた第1回日本母親大会。評論家の丸岡秀子さんが「主人と呼ばず夫と呼ぼう」と提唱した。遠藤さんによると、「主人」が使われたのは明治以降で、「戦前まで、配偶者を『主人』『ご主人』と呼ぶ人は、インテリ層のごく一部の人だけだった」という。
つまり封建的な響きを持つ「ご主人」は戦後のわずか10年で定着していったと考えられるわけだ。遠藤さんは「戦後民主主義の中で、少し気取った言い方の『主人』をまねる人が増えたのではないか」と説明する。民主化の流れの中で「男言葉、女言葉はやめよう」という主張が男性からあったが、「女性リーダーが『女言葉は美しい』と、その平等主義の流れを止めてしまった歴史のパラドックスもある」と指摘する。