5月11日の日経新聞オピニオン欄、白根寿晴・日本FP協会理事長の「社会人に必須の金融経済教育」から。
・・・資産所得倍増計画達成の成否は、将来のために資産形成を迫られている社会人の金融経済教育と、その結果として得られるファイナンシャル・ウェルネス(生活の経済的な側面を効率的に管理できる能力やその状態のこと)の実現に深く結びついている。
学校教育段階では、すでに中学校と高校で金融経済教育が始まり、時間とともに実績の積み上げが期待される。しかし、社会人の中でも国内企業数の90%以上、被雇用者数の約70%を占める中小企業の被雇用者と個人事業主は大手企業との賃金格差が大きく、これまで資産形成に取り組む余裕がない人が多かった。
資産形成に必要な知識の習得や専門家との相談の機会にも恵まれていなかった。社会人になっても毎月の給与明細書や年末の源泉徴収票の内容を理解していない人も相当数いる。内容を知ることで所得税や住民税、健康保険、年金保険制度などの理解に結びつくが、住民、顧客の相談窓口を担う公務員や金融機関職員の中にも内容をよく理解していない人が少なからずいるようだ。
生活困窮者の自立支援に取り組むように、まず自治体が将来の「生活困窮者予備軍」の発生を防ぐことが重要だ。住民がファイナンシャル・ウェルビーイング(経済的幸福感)を享受するために、社会人向けに金融経済教育の場を提供する必要がある・・・