『縛られる日本人』

メアリー・C・ブリントン著『縛られる日本人 人口減少をもたらす「規範」を打ち破れるか』(2022年、中公新書)を紹介します。著者は、ライシャワー日本研究所の教授です。
宣伝には、次のようにあります。
「人口が急減する日本。なぜ出生率も幸福度も低いのか。日本、アメリカ、スウェーデンの子育て世代へのインタビュー調査と、国際比較データをあわせて分析することで、「規範」に縛られる日本の若い男女の姿が見えてきた。日本人は家族を大切にしているのか、男性はなぜ育児休業をとらないのか、職場にどんな問題があるのか、アメリカやスウェーデンに学べることは――。」

日本人が過去の規範に縛られて、幸福度が低くなり、子どもの数も減ってきていると主張します。
「私が思うに、日本が直面している問題の根底には、二〇世紀後半の行動経済成長期に確立された制度や社会規範の多くが人々のニーズに適合しなくなったという事情がある。「普通」の家族、「普通」の働き方、「普通」の男女の役割とはどのようなものかという点に関して、既存のモデルに従うことができない、もしくは従いたくない人たちは、日々の生活でさまざまな苦労を強いられる。そのような人が増えているのに、そうした人たちのニーズが満たされていないのである。」(7ページ)

「日本の出生率が一向に上がらず、結婚する人の割合が低く、多くの日本人が職業生活と家庭生活で満足感を味わえずに漠然とした不安をいだいている状況は、男女の役割に関する硬直的な社会規範が原因だと、私は考えている。仕事の構造や文化を通じて強化されてきた社会規範が原因で、日本の若い世代は、充実した職業生活と家庭生活を築くうえで手足を縛られており、男性も女性も社会と経済に存分に貢献できずにいる。」(8ページ)

現在の日本社会の不安や問題の基礎には、経済成長期にできた通念が私たちの暮らしの変化に追いついていないことを、拙稿「公共を創る」で説明しています。この本は、題名に(過去の規範に)縛られる日本人と掲げていて、私の主張と共通しています。連載第101回ほか。日本の変化については第39回から第70回

ところで、アメリカ人による日本人論では、エズラ・ボーゲル著『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(1979年)が有名です。それから約40年。日本への賞賛は同情に転換(転落)したようです。

南日本新聞、石原信雄さんのお別れ会

4月20日の南日本新聞(鹿児島の地方紙)、石原信雄さんのお別れ会(4月19日、東京で)の記事に、私の発言が載りました。

「県出向後輩ら業績しのぶ」という表題で、次のように書かれています。
・・・元復興庁事務次官の岡本全勝さん(68)は県に出向前、「地方の現場をつぶさに見てこい」と助言を受けたと振り返り、「鹿児島での経験は東日本大震災からの復興を担う市町村との連携に生きた。国を支えるという気概を教えてもらった」と感謝した・・・

大型連休が始まりました

今年は5月1日と2日を休むと、4月29日から9連休です。季節も良くなり、新型コロナもかなり収まって、よい時期です。皆さんは、行楽などの予定を立てておられることでしょう。知人にある件で電子メールを送ったら、マレーシアの観光地から返事が来ました。

私は連休に入る前に、原稿や講演会の資料作成に追われていました。「連休中にやればよいや」と思っていたのですが、「連休前に提出してください」との指示があり。重なるときには、重なるもので、それ以外の用務もあって・・・。
締め切りが迫っているのにめどが立たないのは、精神衛生によくないですね。たくさんの人の協力を得て、どうにか間に合わせることができました。ほっとしています。が、連休明け締め切りの原稿が、まだできていません。

連休中は孫の相手と、キョーコさんのお供をしましょうか。原稿を書きためて、貯金ができればよいのですが。気分がゆったりすると、仕事ははかどらないのですよね。

長屋聡執筆「第二次臨調以降の行政改革施策」2

長屋聡・前総務省総務審議官が「第二次臨調以降の行政改革施策を振り返って(その1)」に続き、季刊『行政管理研究』3月号に、その2を書いています。

今回は、規制緩和・規制改革を扱っています。行政による社会経済への介入を削減することです。過度な介入を減らし、民間活動を活発にして、経済発展と国民生活の利益を上げようというものです。
主な規制改革の事例が、1990年代、2000年代、2010年代に分けて、表になっています。若い人は知らないでしょうから、よい資料になると思います。

行政改革が、かつてのような行政組織の改革から、それが行う作用の改革、社会への介入の改革に移っていることがわかります。

市町村アカデミーで講演

今日28日は、市町村アカデミーの市町村長特別セミナーで講演をしました。求めに応じて、「令和時代に求められる自治体職員像」という表題です。日頃忙しくしておられる市町村長さんたちに、立ち止まって、現在日本の課題を考えてもらいました。
21世紀も、まもなく4分の1が過ぎようとしています。バブル経済崩壊からは30年が経ちます。経済停滞と社会の成熟は、日本の社会と地域に大きな問題を生んでいます。しかし、その処方箋が明確に認識されていません。経済成長期にできあがった行政の仕組み、社会の通念が、変化に遅れているのです。これらを変える必要があります。

みなさん、熱心に聞いてくださいました。講義後の問い合わせで、「日本にはよい面もあるのでは」との指摘もありました。そうです、日本人は勤勉で誠実、日本社会は清潔で安全です。そのようなよい民度を持っていながら、新しい社会への転換が遅れています。それは、私たち官僚にも責任があります。