公営住宅での住民組織づくり

3月3日の朝日新聞夕刊「飛びこんで12年、5」「災害住宅、つながり後押し」から。認定NPO法人「つながりデザインセンター」(つなセン、仙台市)事務局長の宮本愛さんの活動です。

・・・ 東日本大震災の被災者が入居する災害公営住宅には、共同住宅で暮らすのが初めてという高齢者が多く、おたがいにほぼ初対面というケースが多い。住宅会の設立や運営には外部の支援が欠かせない。
つなセンは18年度から、塩釜市の委託を受けて、錦町東住宅のコミュニティーづくり支援を始めた。直面していた課題は、住民組織の立ち上げだった。

市は当初、共用部分の電気代、水道代を出したが、入居3年目の19年度からは入居者の負担に切り替える方針だった。財源となる共益費を入居者から徴収する住民組織が必要だった。
18年12月、つなセンは共同住宅の管理で入居者が果たす役割などを説明し、意見交換する機会を設けた。だが、出席したのは数人にとどまった。
その後、ランチ会を開くなど住民交流の場を設けて19年3月、有志による世話人会設立にこぎつけた。翌月からは共益費の集金が始まった。

8月には住民組織設立に向けて世話人を務める住民ら約10人が集まった。宮本は「世話人会は暫定的組織。入居者全員の代表となっていない」と説明した。出席者の一人が「市に住宅設備に関して要望したら、『70世帯みなさんの希望がないとだめ』と言われた」と、組織化の必要性を訴えた。
2カ月後、錦町東住宅会が動き出した・・・

管理職に必要な能力、渉外

リーダーシップやマネジメントの教科書を読むと、どのようにして職員を指導し、成果を上げるかが書かれています。もう一つ重要なのが、そのような部下との関係ではなく、外部との関係です。
外部と言っても、2種類あります。一つは、その組織内での他の部局(課長ならほかの課とか)と、その上司である部長や首長・社長です。もう一つは、組織の外部です。

多くの組織において、幹部が外部との関係を考えずに仕事ができることはありません。
各省の幹部は、総理官邸からの指示や与野党からの要求、関係団体からの要望に応える必要があります。企業の幹部も、取引先との関係や交渉能力が重要でしょう。
課長は、部長や社長からの指示を受け、また相談したり報告をしなければなりません。関係各課との交渉と調整も重要です。

部下を動かすことは必須ですが、それと同様に外部の関係者をどう納得させるかが重要です。良い上司とは、部下の面倒見がよいだけでなく、部下の状況や成果を外部に正当に伝えることや、場合によってはその上司や外部からの「無理難題」に抵抗することが重要です。
それに負けて帰ってくるようでは、部下もついてきません。部下たちは、上司の渉外能力を見ていますよ。

私は防災の専門家ではありませんが、大震災被災者支援本部・復興庁で、なぜそれなりの成果を上げることができたか。
それは、私が総理官邸を知っていた、官邸幹部から信頼を得ていた、各党幹部も知り合いだった、各省幹部も私を知っていた、自治体幹部も私を知っていたからです。だから、支援本部や復興庁ができることとできないことを部外の人たちに説明して、納得してもらいました。すべてを引き受けることはできないのです。抵抗した際に、「全勝が言うから、しかたないなあ」と思ってもらえたのです。
幹部に必要な能力の一つが、対外的な「政治力」です。

大震災12年 災害法制を進化させよ

3月12日の朝日新聞社説「大震災12年 災害法制を進化させよ」から。

・・・東日本大震災から12年を経て、津波被災地の復興事業はほぼ完了した。復興基本法第2条の「基本理念」がうたう「21世紀半ばにおける日本のあるべき姿をめざして」の成果が問われる段階を迎えている。
これまでの歩みを顧みて、評価できるのは政府が従来の「国土の復旧」に加えて、「生活の再建」にも乗り出したことだ。
国と県で4分の3を出すグループ補助金、販路開拓や新製品開発での大企業とのマッチングといった「官と民」の柔軟な連携は斬新だった。「行政哲学を転換した」ともいわれ、その後の災害にも継承されている。
一方で旧態依然の手法の弊害が厳しく指摘され続けた。
道路、農地、防潮堤など省庁縦割りの事業はスピード優先で費用対効果が二の次にされ、過大な公共工事を多く生んだ。復興庁の元事務次官が「止めたくても止められなかった」と認める現場もあったほどだ・・・

・・・実情を踏まえた現場の声を教訓として生かし、時代の要請に合った新制度を設計してゆく。そうやって災害法制を進化させることが、東日本大震災を経験した世代の務めのはずだ・・・

肝冷斎、新しいサイト2

先日、肝冷斎が、ホームページを新しく立ち上げたことを伝えました。「肝冷斎、新しいサイト

当初は、変な空白があったり、やたらと目次が並んでいたりして、見にくかったのですが。その後どんどん進化して、よくなりました。苦労したんでしょうね。
特に、表紙が見やすく、わかりやすくなりました。
観タマにも、現地調査にも精を出しています。毎日の、難解な古典漢文解釈講義も続け、その熱量は尊敬します。