介護離職対策、悩みの相談

2月1日の日経新聞「介護離職は心のケアで防げ コマツが相談会、満席続く」から。

コマツが介護を理由とする離職の防止に向け、社員の心のケアに取り組んでいる。専門家による相談会を毎月開き、悩みを打ち明けやすくする。会社に相談できずに介護をしている社員は想定以上に多いと判断し、「離職予備軍」の増加を防ぐ。介護離職は2010年代から急増し、近年は年間約9万〜10万人に達する。会社を支えている40〜50代の社員を失うことは大きな痛手で、対策は待ったなしだ。

コマツは18年から約2万4000人の社員を対象に、外部の専門家に介護の悩みを相談できる個別相談会やセミナーを開いている。月間10人の相談枠は昨年12月〜今年2月まで満席が続く。追加の駆け込み案件も多く、需要が高まっている。
外部委託先のNPO法人「となりのかいご」代表理事の川内潤さんらは、のべ約470人の社員の声を聞いてきた。相談者は40〜50代が多く、10人に1人ほどは「いずれ会社を辞めなければならないのか」などと離職への不安を口にするという。
コマツは社員の介護負担の増加について早くから危機感を持っていた。「多くの社員が介護に携わる時代になる」とみた労働組合が介護休業の延長を提案。11年には法律が定める通算93日よりも多い最長3年まで休めるようにしたほか、手当など金銭面も手厚くした。
ところが17年ごろに制度の利用状況を調べると、休業者は5年間でわずか18人。実は会社に相談せずに週末などを使って介護をしている社員が予想以上に多いのではと思い直した。「真の需要に寄り添えていないのでは」と感じた同社が着目したのが、本音を打ち明けやすい環境の整備だ。
介護はプライバシーに関わる問題で、社内では打ち明けにくい面もある。コマツは外部の専門家による相談会にすることで心理的なハードルを下げた。会社には匿名で参加できるのも利点だ。
「親不孝介護」などの著書もある川内さんは、「優秀な社員ほど一人で解決しようとして悩みを抱え込み、突然の離職に至るケースも多い。『プロに任せられることは任せ、親とは適切な距離を保つべきだ』などと助言している」と話す。
相談者からは「自分の生活を優先していいんだと気づいた」「自分が深刻な状態にいることが理解できた」との声が上がるなど、悩みを打ち明けて心の負担が軽くなった人が多いもようだ。現在、コマツの介護離職は数年に1人程度という。石田さんは「介護需要が拡大するなかでもリスクを抑えられているのでは」と手応えを感じている。

「隠れ介護者」の存在は根深い問題だ。仕事と介護の両立を支援するリクシス(東京・港)によると、「介護が理由とカミングアウトしないまま辞めたり、辞めずとも有給休暇などで両立に励むケースが多く、実態を把握できている企業はほとんどない」という。
最大の壁は心理的な要因だ。「職務を奪われるのでは」「賃金に響く」といった不安から、会社への説明に及び腰になるという。特に50代などは「育休世代と違い、仕事を長期で休んだ経験がないことも影響している」(リクシスの佐々木裕子社長)。本音を引き出すため、心理的安全性をどう担保するかが課題だ。