不登校、公的支援充実を

1月27日の日経新聞「教育岩盤・迫る学校崩壊」、今村久美・認定NPO法人カタリバ代表の「不登校、公的支援充実を」から。

不登校の小中学生が急増し2021年度に過去最多の24万人に達した。インターネット上の仮想空間を使った不登校児の支援などを進める認定NPO法人カタリバの今村久美代表は「公的支援が足りない」と訴える。

――不登校が増え続ける状況や背景についてどう考えていますか。
「きっかけは多様で一概に増加の理由は語れない。ただ、一律に同じ内容を同じスピードで学習することに合わない子どもはたくさんいる。学校がこれまでそこに目をつぶってきたことは一因だろう」
「子どもが自ら学校に行かないことを選ぶ『積極的不登校』の考え方もあるが、現実には学校に行きたいけれど行けない子どもが多いと感じる。同じ学区の子が楽しそうに登校する姿を見て苦しい思いをしている親子は多い」

――不登校の子への支援の現状をどう思いますか。
「全く足りていない。ケアは家庭が背負ってしまっている。国の調査で学校や民間など誰の支援も受けていない不登校の子は全体の36%に上る。行政が手掛ける教育支援センターを利用したケースも1割と少ない」
「フリースクールのような民間団体の運営には公的補助がない。月会費などの経済的負担も大きい。全ての子どもが利用できる公的支援を強化する必要がある」

――どんな取り組みが必要ですか。
「まずは公的な支援につながっていない子を把握する責任者を置くことから始めるべきだ。教員だけで家庭訪問を続けるのは難しい。登校支援コーディネーターのような役割を置き、きちんと追いかけられる仕組みが必要だ」
「もう一つは子どもたちの居場所をつくる事業者や地域の団体を行政が認定し、連携することだ。自治体の壁を越えてデジタルなどの支援に生かせるツールを共有することも大事だ」

――学校に求められる役割は。
「学校は全国各地で子どもが歩いて行ける場所にある重要な教育福祉機関だ。親から離れても安心安全で、公的な第三者として自分のことを見守ってくれるような大人がいれば、孤立を防ぐ有効な手立てになる」
「不登校でも学校に相当する場所に通ううちに人とつながって楽しいと感じたり、新しい考え方を発見したりする。教員と合わないと感じた場合には他の選択肢を選べる公的なオルタナティブ(代替)を充実させる必要がある」