1月1日の朝日新聞生活欄「日本の家は寒すぎる」から。
・・・2022年10月、京都市であった第29回国際高血圧学会。
「高血圧や循環器の病気は生活習慣病として広く知られていますが、住環境による『生活環境病』としても捉える必要があります」
学術集会での招待講演で、東京工業大の海塩渉(うみしおわたる)助教(建築環境工学)が訴えた。「日本人の多くは、寒すぎる部屋で暮らしているのです」
部屋の寒さが、健康にどう影響しているのか。近年の研究で徐々に明らかになってきた。
海塩さんも参加する、慶応大・伊香賀(いかが)俊治教授(建築環境工学)らの研究チームは、14年度から、国土交通省の補助金を受けて「スマートウェルネス住宅全国調査」を始めた。建設会社や医師らとも協力し、断熱改修を控えた全国約2190軒の戸建てを対象に、冬の2週間、居間や寝室、脱衣所の室温を10分おきに測定。断熱改修後にも同様に測った。
その結果、断熱改修前には約9割の家で在宅中に18度未満になった。居間について都道府県ごとに平均室温をみると(調査対象が少ない4県はのぞく)、18度以上は北海道、新潟、千葉、神奈川の4道県にとどまった。最も低かったのは香川で、北海道との差は7度近かった。
18度は、世界保健機関(WHO)が推奨する冬の最低室温だ。WHOは18年、「住宅と健康ガイドライン」を発表。寒冷な季節に、人々の健康を守るための安全でバランスのとれた最低室温として18度を強く勧告した。寒冷地では、新築住宅に効率的で安全な断熱材を使い、既存住宅も断熱改修を行う必要があるとした。
世界的に高齢化が進み、今後ますます高齢者が自宅で過ごす時間が増えるとみられる。しかし、その家が寒いと高血圧による循環器疾患のリスクが高くなってしまう・・・