12月25日の朝日新聞投書欄「男のひといき」、73歳の方の「下戸にはいい時代」から。
・・・コロナ禍でなければ忘年会たけなわであったろうこの季節、酒を飲めない私にとっては苦痛でしかなかった。ゼネコンに入社して数年目、四国支店にいたときの出来事だ。
現場トップのあいさつに続く乾杯を、グラスに口をつけるだけで済ませた私は食べることに専念していた。しばらくすると、右隣の先輩がビールを勧めてきた。
私が「すみません、飲めないんですよ」と断ると、昔からの恒例のフレーズ、「俺の酒が飲めんのか」と怒り出した。
するとそれを見ていた左隣の先輩が、「飲めん者に無理に飲ますことはないやろう」と意見したことで、先輩同士の衝突に発展してしまった。幸い殴り合いにこそならなかったものの、口論は5分以上続いただろうか。
原因となった私は10歳ほど年上の先輩2人に挟まれなすすべもなく、ただおろおろするしかなかった。
今から半世紀も前、会社の飲み会を拒むことなどとてもできなかった。しかし今はできるらしい。酒席への参加を強要する上司はパワハラで訴えられる可能性さえあるとか。
私みたいな下戸にとっては実にいい時代になったものである・・・