12月16日の日経新聞に「カルテル「申告制」の威力 処分減免、関電は課徴金ゼロ」が載っていました。
・・・企業向けの電力供給を巡り、公正取引委員会が大手電力3社に独占禁止法違反(不当な取引制限)で計約1000億円の課徴金案を通知した。関西電力が全額免除の一方で、売り上げ規模が最も小さい中国電力は課徴金で過去最大の707億円。結果的に明暗を分けたのが、違反を自主申告して課徴金の減免を受ける「リーニエンシー」制度だった。
「うちは荒っぽいことをやめるので、お互いに荒らさずやりましょう」。関係者によると、関電のトップ級の役員らが2018年秋ごろ、中国電、中部電力、九州電力の3社の役員らと順次協議。それぞれに「相互不可侵」を持ちかけたことが発端となった。
各社と個別に合意を結んだ関電は、違反申告への対応も素早かった。19年に金品受領問題が発覚し、コンプライアンス(法令順守)の徹底が求められていた時期、自社が主導したカルテルを公取委に打ち明けた。申請順位は1位で、課徴金は全額免除となる。
「納得がいかない」。他の電力会社の幹部からは自らのカルテルを棚に上げた恨み節も漏れる。関電の売上高は2兆8000億円を超え、4社中で最大。独禁法に詳しい弁護士は「リーニエンシーが認められなければ課徴金は関電1社で1000億円を超えた可能性がある」とみる。・・・
・・・リーニエンシーの導入は06年。当初は「日本になじまない密告」といわれたが、22年3月までに適用は延べ401社に上った。
協力度合いの評価基準が不透明などの課題はあるが、制度の浸透により、違反を覚知した経営陣は早期の対応を迫られることとなった。過去にカルテルを認定された企業の経営陣が、制度を利用しなかったとして株主代表訴訟を起こされ、役員らが5億円超を会社に支払うことで和解した例もある。対応を怠れば行政処分に訴訟リスクが加わる・・・
カルテルを持ちかけた関西電力が課徴金を免除され、応じた中国電力が707億円もの課徴金をかけられるのは、何かしら変な気がしますが。
私は、規範遵守(コンプライアンス)の講義に、この話題(違反の自主申告、内部通報)を使っています。違反を起こさないことと、それを見つけた場合の対処です。
法令違反はやってはいけないことですが、根絶は無理でしょう。それを見つけたとき、気がついたときに、どのように振る舞うべきか。誰しも「ばれなければよい」と思うのではないでしょうか。ところが、ばれるのですよね。すると、傷口はもっと広がります。そして、管理職の責任はさらに重く問われることになります。「受動的な責任と能動的な責任」「責任をとる方法」