年別アーカイブ:2022年

統計不正、官僚の組織管理の問題

2022年1月25日   岡本全勝

1月22日の朝日新聞オピニオン欄「統計不正 この国はいま」、田中秀明・明治大学教授の「政策見直さぬ、官僚の「政治化」」から。

――政治家と官僚の関係はどう変わってきたのでしょうか。
「かつては一定の緊張感があった両者の関係は平成以降、政治主導の流れのなかで変わってきました。いま官僚は常に目玉政策を考えねばならず、過去の政策を振り返る余裕などありません。政治家が思いついた政策に『ノー』と言えば、左遷もありえます。そんな上下関係があるから、政策を評価したり、問題点を指摘したりすることはできないのです」
「官僚が、政治家の下請けになり、先輩たちがやってきた政策を否定せず、自分たちの利害を優先する。私は『公務員の政治化』と名づけました」

――それが霞が関や官僚の劣化なのでしょうか。
「官僚の役割は政策を検討したり実施したりすることですが、それには専門性が重要です。しかし、係長級を含めほとんどの官僚が、政治家や業界の根回しに奔走します。経済社会は複雑化しているので、より高い専門性が必要ですが、根回しで勉強する時間もありません」
「霞が関の幹部は法学部出身のゼネラリストが多く、エコノミストやITの専門家は不足しています。諸外国では、省庁幹部に博士号を持つ人が多いですが、日本では限られています」

――人事制度が最大のネックになっているというのですね。
「課長や局長は短ければ、1年ほどで異動します。そつなくこなし、リスクはとらなくなる。可能な限り専門性を磨いて、政治家を忖度するのではなく、成果をもとに処遇されるようになれば、不正は減り、政策過程も少しは改善するでしょう。事務方トップの事務次官が毎年のように交代し、名誉職化している点も問題です。英国などの次官は予算執行や内部統制に一義的な責任を負っており、内部監査委員会も設置されています。次官が組織運営に指導力を発揮するべきでしょう」

――外部の機関が政策をチェックするのはどうでしょうか。
「これが著しく弱いことが大きな問題です。ほとんどの先進国で導入されている独立財政機関は、日本にはありません。国会の政府監視機能も弱い。与党議員も一議員としてその役割を担うべきです。法律を作る際、与党の事前審査で審査も修正も実質的に終わるため、国会審議も形骸化しています。結局のところ、政策過程の劣化は日本の政治システムの問題なのです」

齋藤純一ほか著「ジョン・ロールズ」

2022年1月24日   岡本全勝

齋藤純一、田中将人著『ジョン・ロールズ 社会正義の探究者(2021年、中公新書)を読みました。私にとって、「比較的」分かりやすかったです。

ジョン・ロールズは、『正義論』(1971年、邦訳2010年、紀伊国屋書店)で哲学を再生させたと評価される、ハーバード大学の哲学の教授です。
『正義論』は買ったのですが、分厚くて、本棚で寝ています。ロールズを紹介する本もいくつかかじったのですが、その都度、挫折。この中公新書は、最後まで読み通すことができました。新書は、門外漢がとりつくには、ありがたいです。すべてを理解できたわけではありませんが、ほぼ全体像をつかむことができました。

ところで、歴史上の偉大な人や研究者の評伝には、2種類のものがあるようです。一つは、その人の成り立ちから、行ったことを詳しく書いたものです。もう一つは、その人のこととともに、その人が育った背景、そして社会に何を提示し何を変えたか、それは後世にどのような影響を与えたかを書いたものです。前者はその人についての深掘りであり、後者は社会と歴史におけるその人の位置づけと言ってよいでしょう。

門外漢や初心者には、後者が必要なのです。その人が書いた書物を読むときも、それまでの何を変えたか、社会と後の世にどのような影響を与えたかを知らないと、その古典の価値が分かりません。

新聞の未来

2022年1月24日   岡本全勝

1月21日の朝日新聞オピニオン欄、前ワシントン・ポスト編集主幹、マーティン・バロンさんのインタビュー「ジャーナリズムの未来」から。
・・・米国で最もよく知られるジャーナリストの一人がワシントン・ポストの前編集主幹マーティン・バロン氏だ。昨年2月までの約8年間、一時は経営不振に直面した同紙の編集部門の改革の先頭に立ち、電子版購読者数を大きく増やした。ネット時代をいかにチャンスに変えたのか・・・

――13年10月、ワシントン・ポスト社はアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏に売却されました。変化は起きましたか。
「彼は最初から最重要かつ根源的なことを実行しました。この新聞の戦略を変えたのです。首都ワシントン地域に焦点を絞るというそれまでの戦略は正しくないと考えていたのです。我々は経済基盤の全てをインターネットに破壊され、広告収入も失い、苦境のさなかにいました。しかし、彼の言葉を借りれば、インターネットは我々に一つの贈り物を与えてくれました。ほとんどコストをかけずに国内、海外のどこにでもニュースを届けられ、プリント版を刷らずに全国紙あるいは国際紙になれるという贈り物です」

――具体的にはどんな改革をしたのでしょうか。
「ベゾス氏は、『戦略に沿った正しい取り組みには投資する』と語りました。彼は二つの要素を満たすアイデアを求めました。一つは単に地域的な読者ではなく、全国の人々に訴求するもの。もう一つは、若い世代を引きつけるもの。我々は若い読者を必要としていました。若い世代を開拓しなければ、20年後には読者はいなくなってしまいます。そこで我々はそれらの要素を満たす一連のアイデアを提案しました」

「一つはインターネットにおけるコミュニケーションとは何かを理解しているジャーナリストたちの採用です。彼らの多くはデジタルメディア出身で、紙中心の媒体で働いたことがない人々です。彼らは、新聞で典型的に使われる堅苦しい文体や構成ではなく、インフォーマルで親しみやすい話し言葉で文章を書きます。ソーシャルメディア上で認知され、読者を開拓する必要があることを理解していました。また、自分が書いた記事がどう読まれているかを知るために指標に注意を払います。記事を読んだ読者の数や最も関心を集めたテーマ、どのような表現方法が良い結果を出しているかなどを知る指標を把握していました。彼らは我々に一つのモデルを示してくれました」

「我々の仕事は24時間態勢になりました。インターネットの世界では人々は瞬時にニュースが読めることを期待しています。我々は夜間のニュース部隊をつくりました。日中に編集部門が取り上げなかったニュースの中から最も話題になっている面白いものを選んだり、違った視点から続報を出したり、ニュース速報を配信したりする仕事を一晩中担当します。これは大変成功しました」

――インターネット上には、無料で読める記事が氾濫しています。ジャーナリズムはどう差別化を図るべきでしょうか。
「ジャーナリズムの将来は、我々の仕事にお金を払う気持ちを読者に持ってもらえるかどうかにかかっています。真の価値を提供すれば、読者はそれにお金を払います。徹底した深い取材、より多くの調査報道、優れた分析、物語性のある読み物、深く掘り下げた人物記事など、こうしたジャーナリズムの仕事はメディアの将来にとって極めて重要です」

デジタル化の壁、中間管理職

2022年1月23日   岡本全勝

1月19日の日経新聞に「DXの壁は中間管理職? 40代「関わりたくない」4割」という調査結果が載っていました。
・・・大企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)は中堅社員がボトルネックとなっている可能性がある。DXに関する意識調査で40代の4割が「関わりたくない」と回答し、世代別で最多だった。中間管理職は短期で成果を求められることに加え、失敗しても挑戦を評価する人事制度がないことが少なくない。前向きにDXに取り組む動機づけが課題となる。

「上から『とにかくやれ』と言われても何から手を付けていいか分からない」。大手製造業で働く40代社員はこぼす。40代は自ら業務をこなしながら、部下の育成や労務管理をするプレイングマネジャーは多い。子育てや介護もある。デジタルを使った新規事業の開発など成果が出るまで時間のかかるDXに時間を割く余裕はない・・・

・・・日本の中堅社員のDXに対する後ろ向きな意見は世界でも突出している。米IT(情報技術)企業のABBYYが実施した調査で自社のデジタル化について聞いたところ、「十分に準備している」との回答は日本の中間管理職(マネジャー)が37%と、米国(75%)やドイツ(61%)を大きく下回った。パナソニックの玉置肇最高情報責任者(CIO)は「欧米企業は意思決定がトップダウンなのに対し、日本はボトムアップも重視するからだ」と説明する。
経営者の決めた方向性に向かってベクトルを合わせて一気に走る欧米企業と比べると日本は合意形成に時間をかけ、スピードが遅い。経験豊かな中堅社員は仕事のやり方を変えるのが簡単ではないことを熟知しているからこそ、後ろ向きな声が多いという見立てだ・・・

電車通勤

2022年1月22日   岡本全勝

市町村アカデミーに移ってから、3か月あまりが経ちました。千葉市幕張まで、電車を使って通勤しています。
地下鉄丸ノ内線で新高円寺駅から、四谷駅まで約17分。JRに乗り換え、中央線と総武線の各駅停車で幕張本郷駅まで約50分です。そこから車で学校まで。合わせて1時間半あまりです。いろいろと試してみたのですが、これに落ち着きました。

各駅停車は時間がかかるのですが、快速に乗り換えても、あまり時間の短縮になりません。そして、各駅停車は座っていけるのです。
多くの通勤客とは逆の方向なので、すいています。御茶ノ水駅を過ぎると、しばらくがら空きです。ゆっくりと、新聞切り抜きなどを読むことができます。もっとも福島市に通っていたときの新幹線とは違い、横長の座席で、2分ごとに停車を繰り返しますから、原稿書きや難しい資料を読むことはできません。

隅田川、荒川、江戸川と、大きな川を三つも渡ります。江戸城外堀や国技館なども見えます。
帰りの電車は、眠くなります。冬の午後の暖房の効いた、そして適度に揺れる車両は、眠気を誘います。皆さんも、経験があるでしょう。