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連載「公共を創る」執筆状況報告

2022年3月17日   岡本全勝

恒例の、連載「公共を創る 新たな行政の役割」の執筆状況報告です。
「2社会と政府(2)政府の社会への介入」の続きを書き上げ、右筆に手を入れてもらって、編集長に提出しました。

前回まで、社会(コミュニティ)への介入を書いたので、今回は、個人への介入です。公共の秩序を維持するために社会への介入が求められますが、個人にはプライバシー権があるので、介入は抑制的であるべきです。関与するとして、何についてどこまで関与するかが問題になります。また、内心への関与は避けるべきですが、いじめを防ぐためや、本人が一人前のおとなになるために、道徳や倫理を教えなければなりません。しかし、戦前の「修身」の反省に立って、道徳教育は控えられてきました。

また、幸福感、生きがい、生きる意味は、国家が関与するものではなく、個人が考えるものです。しかし、かつてに比べまた諸外国に比べ、日本の若者の幸福感は低いようです。そして誰もが、老いて病気になったり、親しい人が死んだりすると、生きる意味や死の意味を考え悩みます。
科学は、それに答えてくれません。親の教えや宗教が弱くなると、誰もその悩みに答えてくれません。個人の悩みと政府の所管範囲に「空白地域」があるのです。では、どうすればよいのか。難しいです。

これらについても、適当な概説書がないので、執筆に苦労しました。右筆との共同執筆に近いです。
1か月にわたって苦闘し、右筆が真っ赤に手を入れてくれた原稿は、ゲラにすると4回分になりました。4月掲載3回と5月掲載1回です。
締め切りを守って原稿を提出すると、ほっとします。今週は、内閣人局研修の質問への回答も仕上げましたし。夜のお酒がおいしいです。

新しい生活困難層への安全網を

2022年3月17日   岡本全勝

3月4日の日経新聞経済教室「社会保障、次のビジョン」下、宮本太郎・中央大学教授の「新しい生活困難層に安全網」から。
・・・新型コロナウイルス禍が困窮と孤立を広げている。セーフティーネット(安全網)をどう張り直すか、次のビジョンが問われる。
厚生労働省はこれまで3重のセーフティーネットという考え方をしてきた。第1が安定雇用を前提にした社会保険、第3が生活保護などの公的扶助であるのに対し、両者の間すなわち生活保護の前の段階で、第2のセーフティーネットを充実させるという主張だ。そこでは失業などで困窮した人を支援して安定就労につなぐことが期待された。具体的には職業訓練中の所得保障である求職者支援制度や、生活再建について相談支援をする生活困窮者自立支援制度が導入された。
コロナ禍が改めて示したのは、この3重のセーフティーネット論が現実を必ずしも正確にとらえていないということだ。安定的に就労し社会保険に加入できている層と生活保護を受給する層の間に「新しい生活困難層」と呼ぶべき人々が急増している。非正規雇用などの不安定就労層、ひとり親世帯など、自分や家族の多様な困難から困窮や孤立に陥っている人々だ。

安定就労層、新しい生活困難層、福祉受給層は、3重のセーフティーネット論が想定するように、上から順繰りに3段階で沈み込んできているのではない。むしろそれぞれの層が固定化してきている。
新しい生活困難層の多くは、就職氷河期世代にみられるように、最初から正規雇用に就けないままだ。そしてコロナ禍の経済的打撃がこの層に集中し所得がさらに減少しても、生活保護に移行する人は少ない。生活保護受給の実人数はコロナ禍の下で減少すらしている・・・

・・・新しい生活困難層が急増し、3層が分断されている状況下で、いかにセーフティーネットを張り直すか。
両極のいずれを拡張していくかで、大きく2つのアプローチが対立している。
第1のアプローチとして安定就労の側から就労機会を拡張していくことが主張されてきた。具体的には、職業訓練などの就労支援を重視することだ。トランポリン的な機能で雇用につなぐ第2のセーフティーネットというのは、このアプローチの一環といえる。また13年には政府の産業競争力会議が、労働移動支援助成金を大幅に増額して労働移動を促す一種の積極的労働市場政策を打ち出した。
だがスウェーデンなどで積極的労働市場政策がセーフティーネットとして効果を発揮できたのは、困窮のリスクが主に失業に起因していて、なおかつ職業訓練などで安定就労につなげることが期待できたからだ。不安定就労層としてキャリアをスタートさせ、職業訓練や保育サービスを利用する生活の余裕すらない人が増大し、他方で生活の安定に直結する就労機会が減じていれば、前提は崩れる・・・

若手官僚の悩み、講義後の質問2

2022年3月16日   岡本全勝

若手官僚の悩み、講義後の質問」の続きです。
たくさん質問をもらったことは、うれしいです。手応えがあるということですから。答えを書きつつ、「このような質問は、職場ではしにくいのだろうな」「近くに相談に乗ってくれる人がいないのかなあ」と思いました。私が仕事で悩んだときに助言してくれたのは、上司ではなく6年から2年年上の先輩でした。

読売新聞の「人生案内」や、朝日新聞土曜別刷りの「悩みのるつぼ」という人生相談投稿欄があります。その回答者になった気分でした。
回答をつくるにあたって、岡本組の組員たち(何かと相談に乗ってもらう元部下たち)に、相談しました。ありがたいことに、私の気づかない点を指摘してくれました。

皆さんはご存じないでしょうが、昔ラジオの人生相談番組に、融紅鸞(とおる こうらん)という、大阪のおばちゃん(?)の回答者がいました。昭和40年代でしょうか。夫婦の悩み事、おおかたはひどい夫についての妻からの相談に、「ほな、別れなはれ」という身も蓋もない決めぜりふを言います。
私も結論を急ぐ方で、それに近い回答を考えるのですが。協力してくれた「岡本組の相談員たち」は、親切でした。「悩んで相談している若手に、もっと親身になって回答すべきです」と忠告をくれました。また、私の回答案に対して「相談者が悩んでいることは、それとは別ではないですか」と、鋭い読みをした助言者も。

中には、次のような指摘をする相談員もいました。
「質問者は、質問内容を電子メールに打っている段階で、自ずと答えのようなものを見い出していることも多いのではないでしょうか。そして、「岡本先輩のような人に聞いていただきたい、分かっていただきたい」という思いと、「岡本先輩に、自分で見い出した答え的なものを後押ししてほしい」ということなのではないでしょうか」
そのような効果があれば、よいですね。

コロナ経済対策の検証

2022年3月16日   岡本全勝

3月3日の日経新聞経済教室「社会保障 次のビジョン」中、鈴木亘・学習院大学教授の「非常時対応、既存制度改革で」から。

・・・問題は今後もショックが起きるたびに、今回のような大規模な財政出動を繰り返すのかということだ。コロナ前には、国の一般会計歳出額は年間100兆円前後で推移していた。だが2020年度の3回の補正予算を含む歳出額は175.7兆円、21年末に成立した補正予算を含む21年度の歳出額は142.5兆円と、空前の規模に達している。
高齢化による社会保障費増が続くなか、こうした大盤振る舞いを何度も続けていては、いずれ日本の財政は立ちいかなくなる。そろそろウィズコロナにふさわしい効率的な経済対策を検討し、現在の「非常時体制」から脱する必要がある。
コロナ経済対策を振り返ると、大部分は生活支援の給付金、雇用対策、休業支援、弱者・貧困対策、医療・介護の補助金などに費やされており、広義の社会保障にほかならない。社会保障ならば失業給付や生活保護などのセーフティーネット(安全網)が用意されているが、今回はそれらがあまり使われず、現金給付や特例措置などの新施策が次々と創設された。まるで既存制度を使わないことが政策目標であるかのようだ・・・

・・・結果をみると、特にコロナ禍の初期時点ではパニックによる解雇や廃業を防ぐため、新施策がよく機能したことは評価できる。問題は泥縄式の急ごしらえで作った制度なので、救済すべき対象以外にもバラマキがなされ、財政規模が大きくなりすぎたことだ。国民全員に10万円ずつ配った特別定額給付金が典型例だ。
その後も、ひとり親世帯や子育て世帯への臨時特別給付金などとして、継続的にバラマキが実施され、もはや財政のタガが外れてしまったかのようだ。また休業支援金についても、支援金の方が得だからと不必要な休業を選択する本末転倒な使い方がされることや、持続化給付金のように不正受給が横行する例もある・・・

・・・今後、コロナ経済対策をどう変えていくべきだろうか。新施策はあまりにも財政浪費的だ。大幅に整理したうえで、必要な部分は既存の社会保障制度の中に取り入れて、次のショックに備えるべきだ。長年の風雪に耐えた既存制度は、さすがに完成度が高く効率的でもある。もっとも、新施策が作られた背景には、既存制度では非正規労働者や被害を受けた業界への迅速な救済が難しかったことがある。その意味で、既存の社会保障制度もコロナ禍の反省に立って見直すべきだ・・・

詳しくは原文をお読みください。

震災復興、非営利団体への支援

2022年3月16日   岡本全勝

古くなってすみません。東日本大震災から11年ということで、各紙が特集を組んでいました。今日紹介するのはNPOの活躍と、資金難で活動が細っていることです。

3月5日の読売新聞「復興の実像5被災者サポート 資金難
・・・宮城県七ヶ浜町の災害公営住宅で暮らす女性(36)の次女(5)は近くの交流施設「七ヶ浜みんなの家きずなハウス」の前に来ると、「遊んでいきたい」とだだをこねる。ハウスは、NPO法人「レスキューストックヤード」(名古屋市)が子どもの遊び場や住民の交流の場として運営してきたが、昨年3月末で閉鎖された。
理由は資金不足だ。活動費の大半を賄っていた寄付金は減少し、自治体からの助成金を充てても年約1000万円の費用を捻出できない状況が続いていた。同法人の横田順広さん(45)は「孤立しがちな人に手を差し伸べるなど、支援はまだ必要なのに」と唇をかむ。
東北の被災地には、NPOなどの団体が1000以上入ったともいわれる。それぞれの得意分野を生かし、「心のケア」「まちづくり」などの支援を行ってきた。マンパワー不足の自治体に代わり、行政の手が回らない部分を補ってきた面もある。だが、「震災10年を機に活動停止や規模縮小が増えている」と、支援団体でつくる「東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)」は指摘する・・・
・・・災害対策基本法が13年に改正され、国や自治体は支援団体を含むボランティアと連携するよう義務づけられた。だが、「支援団体の位置づけはあいまいで、国の援助も足りない」と、兵庫県立大の阪本真由美教授(被災者支援論)は批判する・・・

同「支援分担「石巻モデル」 団体同士で調整 官民で連携
・・・東日本大震災で最大被災地となった宮城県石巻市には震災直後、100以上の支援団体が駆けつけた。混乱の中、互いの顔も活動内容も知らない団体同士が集まって役割を調整し、市役所や自衛隊などと情報共有する仕組みを作り上げた。「石巻モデル」とも呼ばれた連携の形は、災害対応の「基本」として定着しつつある・・・

3月8日の日経新聞、菅野祐太・NPO法人カタリバディレクター(岩手県大槌町教育専門官)「学ぶ意欲、出会いが育む 被災地の岩手・大槌で学習支援」「2つの震災が残す課題 孤独死600人超、つながり構築に壁」、朝日新聞3月9日夕刊の「「支えられた私、今度は支える」 震災遺児ら癒やすレインボーハウス」も参考になります。