臓器移植法25年

朝日新聞が、1月14日、21日と、臓器移植法25年を取り上げていました。14日の「臓器提供件数、世界と大きな開き」から。

・・・脳死となった人からの臓器提供を可能にする臓器移植法が1997年に施行され、今年10月で25年がたった。2021年までの直近10年の脳死下での臓器提供数は年平均約64件。法施行直後に比べれば大幅に増えたが、世界的な水準とは大きな開きがある。

法施行から25年となる今年10月16日までの脳死下の臓器提供数は計878件。10年の法改正までは、書面などで本人の提供意思が確認できることが条件となっており、最大で年13件にとどまっていた。
法改正により、本人の意思が分からなくても家族の同意があれば提供できるようになってから提供件数が増加。10年は32件、以降は年40~70件台で推移し、19年には最多となる97件となった。
しかし、新型コロナウイルス感染症が流行した20、21年は、医療現場の負担増の影響で60件台に落ち込んだ。22年は10月末時点で77件と、19年に並ぶペースとなっている。
世界的にみると、日本の実績は極めて低調だ。各国データを収集する臓器提供・移植に関する国際レジストリー(IRODaT)によると、心停止後を含む19年の日本の提供件数は人口100万人あたりで0・99。米国約37、英国約25、ドイツ約11に比べると、大きな開きがある。同じ東アジア圏でも韓国8・68、中国4・43(18年のデータ)と差が大きい・・・

・・・21年度の内閣府の世論調査では、約4割が自分が脳死と判定された場合、「提供したい」もしくは「どちらかといえば提供したい」と回答。家族の臓器提供の意思を「尊重する」「たぶん尊重する」と答えた人は計約9割だった。にもかかわらず、意思表示をしている人は計1割ほどしかいない。これが、臓器提供が伸び悩む一因とされる。
もう一つの要因には、医療機関側の体制の問題がある。厚生労働省の指針で脳死提供ができると定められているのは、高度な医療を行う大学病院や救命救急センターなど全国約900の医療機関。しかし、厚労省の臓器移植委員会が今年3月に公表した提言書によると、実際に提供ができる体制が整っているのは、436施設と、半数にも満たないとされている・・・

臓器移植法については、このホームページで取り上げたことがあります。「生命倫理をどう議論するか。政治と生命倫理

大学での職業教育

12月14日の日経新聞に「キャリア教育、46%が早期化 ジョブ型採用に備え」という、学長アンケート結果が載っていました。

・・・仕事内容と求める能力を明確にする「ジョブ型」を新卒採用でも導入する企業が増えている。即戦力になる新卒学生を求める企業も現れ始めた。日本経済新聞社が実施した学長アンケートで、変わる人材ニーズへの対応策について聞いたところ、157大学のうち5割弱がキャリア教育の早期化と答えた。一方で大学が職業訓練の場になる可能性を危惧する声も上がっている・・・
「職業訓練校化していくことが高等教育機関の使命ではない」という学長の発言も載っていました。

私は、大学とは職業教育の場で、教養も合わせて学ぶ場だと思っていました。私は、公務員になるために東大法学部に進みました。法学部だけでなく医学部も、職業訓練校です。大学に残って研究者になる人もいますが、多くの卒業生は公務員、法曹、医者になります。教育学部を出た人も、教師になるのでしょう。

東大法学部は、そもそもが官吏を養成するために作られました。当初は公務員試験も免除されていました。その後も、公務員試験、司法試験の予備校の機能があります。
この学校は、明治政府が先進国に追いつくために作った学校です。先進国から先進知識を「輸入」する学者と研究者を育成するとともに、社会でそれを実行する職業人を育てました。実用の学である工学部が大学に作られたのも、先進国では日本が最初だと聞いたことがあります。

大学進学率が5割を超えています。その人たちに、一般教養や専門研究教育を教えるだけでよいのでしょうか。
そのような教育を実施するのは、教員側の都合だと、私は思います。

男女賃金格差

12月15日の日経新聞経済教室「ジェンダー格差是正への道筋 上」は、児玉直美・明治学院大学教授の「資本市場の力を生かせ」でした。

・・・日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、職場におけるジェンダー格差が最も大きい国の一つである。労働政策研究・研修機構によると、2020年の女性管理職比率は、米国41%、英国37%、フランス36%、ドイツ28%、デンマーク28%、韓国16%に対し、日本は13%にとどまる。
またOECD統計によると、日本の男女賃金格差は徐々に縮小しているが、21年時点でもフルタイム女性労働者の収入中央値は男性より22%低い。韓国の31%に次ぐ大きさで、デンマーク5%、スウェーデン7%、ドイツ14%、英国14%、米国17%を大きく上回る。
図は筆者が参加する研究グループによる先進15カ国の30~55歳労働者の男女賃金格差を示したものだ。女性の賃金が男性よりどれだけ低いかを示し、マイナス幅が大きいほど男女賃金格差が大きいことを表す・・・
として、2つの図が載っています。図を見てもらうと、日本の男女差が突出していることが一目瞭然です。

・・・左図の横軸は年齢、教育年数、フルタイム・パートタイムを統制した上での男女の年収格差だ。日本の女性労働者の年収は男性より35%低い。基本属性を統制した後でも、男女賃金格差は韓国に次いで大きい。縦軸は基本属性に加え事業所固定効果を統制した後の同一職場内の男女賃金格差だ。日本の同一職場内の女性の年収は男性を33%下回り、突出して低い。国全体としての男女格差が大きいだけでなく、職場内の格差も大きいことを意味する。

右図は時間当たり賃金の男女格差だ。多くの国で女性は男性より労働時間が短いため、時間当たり賃金でみると男女賃金格差は縮小する。だが日本は基本属性を統制した時間当たり賃金でも、女性労働者の賃金は男性より32%ほど低く(横軸)、同一職場内の時間当たりの女性賃金も男性より30%低い(縦軸)。スウェーデン、オランダ、ノルウェーの女性労働者の時給は同一事業所内の男性より8%低い程度にとどまる・・・

給食の役割

12月14日の朝日新聞「給食の役割は、費用は誰が」、藤原辰史・京都大准教授「公が担う「家族の枠組み出たケアの場」」から。

――無償化に対して「みんなが無関心になって質が下がる」「給食費を払うことで当事者意識が芽生える」などという声もあるようです。
「確かに一理ありますが、税金そのものだって私たちが払っているのですから、給食費を支払うのと同じことですよね。だからその税金を使って、子どもたちにおいしい給食を食べさせてほしい。学校給食法を、子どもの貧困が深刻化した今の時代に沿った形にしていくべきです」

――今に沿った形とは?
「例えば、朝や夏休みの給食の導入を進めてほしい。おにぎりとみそ汁だけでもいいんです。いろいろな事情で、朝ごはんを家で食べてこない子もいます。夏休み明けにガリガリに痩せて登校してくる子もいます。しかし、せめて学校でおなかいっぱい、1食でも食事をすることができれば『地獄の夏休み』を何とかクリアできる。地域の人と食べたり、子ども食堂とつなげたりしてもいいですよね」
「給食に期待される機能も増えています。バランスの良い食事をとる、人と食べる、家庭以外の味を知る……。給食は、子どもをケアするのは家族だけではない、自治体や国や調理師などいろいろな人と協力して一緒に育てようというプロジェクトなんです」

――給食には多様な役割があるのですね。
「もちろん、無償化は進めるべきだと思いますよ。でも、給食を舞台に、子どもの福祉や教育も一緒に整えることが大切なんです。誰からも見守ってもらえているという意識を感じるために給食が必要であるならば、夜も、子どもと保護者が一緒に食卓を囲めるようになればもっと効果があらわれます。そうすると、労働のあり方も見直さなければなりません」

美人にキスしながら 安全運転ができる人間は、 キスに十分集中していない

「美人にキスしながら 安全運転ができる人間は、 キスに十分集中していない」という言葉を思い出しました。アインシュタインの言葉だそうですが、出典は明確ではないようです。私のホームページを検索したら、この話は「同時に2つのことはできない」で書いていました。
この言葉は、「二兎を追う者は一兎をも得ず」という格言より、情景を思い浮かべながら、頭に入ります。もっとも私は自動車を運転しないので、このような状況にはなり得ないのですが。

私は、音楽を聴きながら勉強することができません。人間の頭は、同時に二つのことを考えることができないように、できているようです。
例えば、同時に二人の人の話を聞いて理解することはできません。あなたはできますか?
そして、気が散る場所では、難しい本も読めません。勉強にしろ仕事にしろ、難しいことを考えるには、一つのことに集中すること、その環境をつくることが必要です。また、勉強や仕事以外に難しい問題を抱えていると、頭がそちらの方に向かって、今の課題に集中できないこともあります。
集中力、その1。邪魔する要素、外部要因