時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第8回「それは首相に質問すること?」が、12月27日に配信されました。
今回は、10月の国会での、岸田文雄首相の答弁を取り上げました。宗教法人法第81条に定める宗教法人への解散命令について問われた首相が、1日で解釈を変更したことが話題になりました。しかし、首相はこのような個別の条文解釈を自分で考えたのではなく、事務方の用意した答弁案に沿って答えたのでしょう。
各法律は各省大臣が所管しています。細かい条文解釈は各省の担当者に聞けば正確に答弁します。大臣に聞くならその運用のあり方であり、首相にはそれを踏まえて大臣にどのような指示をするかという方針を問うべきでしょう。失礼ながら、この法律解釈を巡るやりとりは、国会の機能からみて「少し変だよ」と思わざるを得ませんでした。
官僚として、首相や大臣の答弁を補佐する仕事を続けて来ました。その経験からみて、国会質疑は政治家同士のやりとりの場であり、事務的な内容なら政府参考人から答えた方がいいものも多々あります。
あわせて、信教の自由をどのように議論するかについて述べました。国民の思想や世界観に関わる問題で意見の相違がある場合に、それを統合するのは国会の役割です。それは、既定の法律の解釈を確定するということではなく、問題となっている事柄に対して国家や社会がどう対処すべきなのかについての合意形成です。これは明らかに政治の出番です。その例として、脳死を例に出しました。