12月14日の朝日新聞「給食の役割は、費用は誰が」、藤原辰史・京都大准教授「公が担う「家族の枠組み出たケアの場」」から。
――無償化に対して「みんなが無関心になって質が下がる」「給食費を払うことで当事者意識が芽生える」などという声もあるようです。
「確かに一理ありますが、税金そのものだって私たちが払っているのですから、給食費を支払うのと同じことですよね。だからその税金を使って、子どもたちにおいしい給食を食べさせてほしい。学校給食法を、子どもの貧困が深刻化した今の時代に沿った形にしていくべきです」
――今に沿った形とは?
「例えば、朝や夏休みの給食の導入を進めてほしい。おにぎりとみそ汁だけでもいいんです。いろいろな事情で、朝ごはんを家で食べてこない子もいます。夏休み明けにガリガリに痩せて登校してくる子もいます。しかし、せめて学校でおなかいっぱい、1食でも食事をすることができれば『地獄の夏休み』を何とかクリアできる。地域の人と食べたり、子ども食堂とつなげたりしてもいいですよね」
「給食に期待される機能も増えています。バランスの良い食事をとる、人と食べる、家庭以外の味を知る……。給食は、子どもをケアするのは家族だけではない、自治体や国や調理師などいろいろな人と協力して一緒に育てようというプロジェクトなんです」
――給食には多様な役割があるのですね。
「もちろん、無償化は進めるべきだと思いますよ。でも、給食を舞台に、子どもの福祉や教育も一緒に整えることが大切なんです。誰からも見守ってもらえているという意識を感じるために給食が必要であるならば、夜も、子どもと保護者が一緒に食卓を囲めるようになればもっと効果があらわれます。そうすると、労働のあり方も見直さなければなりません」