タクシー運転手不足

11月18日の日経新聞が「タクシー運転手、都内は32年ぶり最少 収入低迷響く」を伝えていました。
・・・新型コロナウイルスの影響でタクシードライバーの減少が深刻化している。全国では2021年度末にコロナ禍前の19年度に比べて2割近く減り、減少が続いている。東京都内では32年ぶりに過去最少を更新した。政府が水際対策を緩和し、インバウンド(訪日外国人)の旅行需要の回復が期待される。ドライバー不足が続けばこうした旅行需要などの回復に影を落としかねない・・・

11月20日の朝日新聞は「タクシー運転手、ソウル哀歌」を伝えていました。
・・・空車のタクシーがなかなか来ない。最近、韓国のソウルでよく聞く嘆き節だ。新型コロナ禍の規制がなくなり、街に出る人が増えたが、「市民の足」の担い手は苦境にあるようだ・・・
・・・「タクシー大乱」 韓国メディアには、こんな言葉がおどるようになった。
韓国のタクシーは運賃が割安だ。今のソウルでの初乗り2キロは3800ウォン(約380円)。これでもずいぶん上がったが、韓国国土交通省によると、20分ほど乗った時の料金は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均の「38%程度」の水準だという。
そんな中をコロナ禍が襲った。その後は、世界的な原材料価格の高騰などで物価高も加速している。「今は、なんとか夫婦で食べていけるぐらいの稼ぎがやっとだよ」。この道で40年のソウル近郊に住むタクシー運転手の男性(73)は言う。現在の月収は、150万〜200万ウォン(約15万〜20万円)程度。息子2人は独立し、教育費などがかからなくなったため生活はできているが、「重労働だし、若い世代はやりたがらないだろうね。昔は基本料金でジャージャー麺を食べ、コーヒーも1杯飲めた。物価が上がった今じゃ、そうもいかない」
ソウル市などによると、タクシー運転手の平均月収は220万〜250万ウォン(約22万〜25万円)程度。ソウル首都圏で家族の暮らしを支えるには十分とは言いがたい。そして、男性が「自分はもう年だから考えなかったけどよく聞くね」と言うのが、運転手たちの「離脱」だ・・・

かつて北欧に行ったときに、タクシー運転手がアジア系の人が多いことに驚きました。移民が就きやすい職業だと言うことでした。低賃金なので、移民の職業になるのでしょう。

官邸一強の弊害

日経新聞は10月31日から5回連続で「ニッポンの統治 官邸1強の後」を連載していました。私の関心分野なので、「ここに書かなければ」と思いつつ、時間が経ってしまいました。記事だけ紹介しておきます。

10月31日「すご腕」雇えぬ政府 人材確保、企業と争奪戦
課長級公務員の給与 米国は日本の2倍、英国は1.2倍
11月1日 霞が関、2カ月無人の「幽霊部屋」 官僚縛る縦割りと兼務
肥大化する内閣官房、10年で定員1.5倍に
11月2日「秘書官政治」が官僚を二分 国を動かす実感どこに
首相秘書官8人体制 「官邸主導」定着で増員傾向
11月3日 草刈り場の霞が関 転職しても役所の仕事
若手キャリア官僚、年100人超の大量退職続く
11月5日 政策決定に空白と困惑 省庁が縄張り返上、押しつけ合い
首相出席の官邸会議、月平均10回超 小泉政権で急増

知識を得ることと知識を得る技を身に付けることと

学校では知識を学びます。国語、算数、理科、社会・・・。社会を生きていくために必要な知識です。もう一つ重要なのは、それを通じて、知識を得る技を身につけることとです。分からないことが出てきたときに、何を調べたらよいか、誰に聞いたらよいかという知識です。前者が事実を身につけることであり、後者は技術を身につけることです。前者は蓄積という量であるのに対し、後者は方法であり姿勢です。
「要領がよい」というのが、その技術を身に付けたことを表します。これは、必ずしも教科の知識が多いこととは比例しません。もっとも、要領を身に付けると、教科の知識も効率的に身につきます。

学校と同様に、職場でもこれは当てはまります。
与えられた職務を執行するに必要な知識を得るとともに、これまでにない事態が生じたり、新しい仕事を考える、さらには昇進するための技です。前者は職務手順書(マニュアル)に書かれています。それさえ理解できれば、仕事は片付きます。後者は、手順書には書かれておらず、自分で身につけていかなければなりません。
仕事をしていると、手順書に書かれていない新しい事態が起きます。それに対処する際に、経験の差、要領のよい人とそうでない人の違い、仕事ができる人とできない人の差が出ます。

学校の教科書は前者であり、拙著「明るい公務員講座」3部作は後者を目指しました。

青柳光昌さん、インパクト投資

11月25日の朝日新聞夕刊「いま聞く」は、青柳光昌・社会変革推進財団専務理事の「インパクト、新興企業どう支援」でした。
詳しくは原文を読んでいただくとして。青柳さんも、東日本大震災復興の際に、復興庁が知恵を借り助けを借りた恩人です。現在は、このような新しい仕事に挑戦しておられます。

・・・「インパクト投資」や「インパクトスタートアップ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。前者は収益と共に社会課題の解決をめざす企業への投資で、後者はそういう経営を行う新興企業をさす。規模は小さいが、確実に芽吹いている。
社会変革推進財団(Japan Social Innovation and Investment Foundation、以下SIIF)ではインパクト投資、なかでもインパクトスタートアップへの投資に力を入れている。

「インパクトはそもそも『影響を与える』という意味の英語ですが、ここでは特に『社会に良い影響を及ぼす』という意味で使っています。もともとは社会的インパクトと言っていましたが、最近では『インパクト』だけで表現することも多くなりました。インパクトスタートアップとは社会課題解決をめざす新興企業。私たちSIIFは、そのようなインパクトスタートアップに年間1億円規模で投資や助成、あるいは他の出資者とファンドをつくって、投資をしています。このようなインパクト投資も注目されていて、岸田文雄首相も施政方針演説で言及しました」
SIIF専務理事の青柳光昌さん(55)はこう話す。金銭的利益と共に社会課題の解決をめざす会社のことを「社会的企業」ともいう。どう違うのだろうか。
「ほぼ同じ意味ですが、インパクトスタートアップのほうが、より成長に焦点をあてていると言っていいでしょう」

インパクト投資は、投資全体からみれば微々たる額だ。しかし急増している。
「SIIFの調べでは2021年は1兆3204億円。20年は3287億円で、1年で4倍に伸びています。21年11月には、金融機関が合同で『インパクト志向金融宣言』を出しました。現在、メガバンク、地銀、生損保、投信会社、ベンチャーキャピタルまで42機関が分野横断的に参加しており、それだけインパクト投資が注目されているということでしょう」

環境に配慮した経営をしている企業に投資をする「エコファンド」など、同種の「社会に良いとされることをしている企業」への投資はいくつも存在した。インパクト投資はどこが違うのか。
「先ほどの『宣言』には各金融機関のトップが自ら名を連ねており、インパクト投資に向き合う本気度がより高いといえるのでは。経済的な成功だけが人生の成功ではない、社会をより良く変えることも生きがいだという若い人が増えています。私たちの投資先の一つに、保育の質の向上や保育士の負担軽減をめざし、保育施設向けICT(情報通信技術)サービスを提供する『ユニファ』があります。13年の設立で、CEO(最高経営責任者)は住友商事、CFO(最高財務責任者)は外資系金融の出身です。30代で創業あるいは転身しています。彼らは、自分たちが社会課題を解決していることに誇りを持ち、明確な成長志向があって日本発で世界進出もしたいと、夢と戦略を描いています」・・・

備える危機の3種類

災害をはじめとして、組織にはさまざまな危機が起きます。それらに、どのように備えるか。3つに分けて考えると、わかりやすいです。

その1は、経験したことがある危機です。人は一度経験すると、二度目は上手に対応できます。組織も同じですが、時間が経つと経験者がいなくなるので、その経験をどのように引き継ぐかが課題となります。

その2は、同業他社が経験した危機です。その際の対応が役に立ちます。というか「私たちには初めての経験なので・・」という言い訳は通用しません。その1の危機もその2の危機も、手順書やそれを基にした訓練が、いざというときに効果を発揮します。

その3は、まだ誰も経験したことのない危機です。いろいろと想定をしておきますが、未曾有の危機では想定外のことが起きます。その際にどれだけ想像力を働かすことができるか。ここに、力量が現れます。