介護福祉士養成、需要増なのに減少

11月17日の朝日新聞に「ケアワーカーがいなくなる?:1」「介護福祉士育む場、相次ぐ閉鎖」が載っていました。

・・・今年の3月、介護福祉科を唯一の学科としていた浦和大学短期大学部(さいたま市)が閉学した。運営法人の久田有・理事長は「学生数の減少に歯止めがかからず、苦渋の決断だった」と振り返る。学生が減っても教員を減らすわけにはいかず、人件費が経営を圧迫していたという。
久田理事長は、学生減少の背景に、少子化で若者が減っていることに加え、「仕事に見合った給与水準になっておらず、社会的評価が低い」こともあると考えている。
介護保険制度では、事業所に支払われるサービスの対価も、必要な職員配置なども公的に定められ、事業所が給与を引き上げる余地は乏しいのが現実だ。厚生労働省の21年調査によると、医療・福祉施設などで働く介護職員の所定内給与は平均で月23万6千円ほど。訪問介護でも約25万8千円で、全産業平均(約30万7千円)を大幅に下回る。

公益社団法人・日本介護福祉士養成施設協会(東京都)によると、会員の専門学校や大学、短大などを対象とする調査では、今年度の入学者は310校あわせて6802人(前年度比381人減)で、調査を始めた14年度(377校、計1万392人)以降最少に。会員の学校数310は前年度より10少なくなった。
協会に記録が残る1988年度以降、入学定員の総数が最多だったのは2006年度(約2万7千人)。調査を始めた14年度から減少が続いた入学者数は、17年に「介護」の在留資格が創設されたことなどで一時は増加に転じたものの、新型コロナウイルスで留学生の数も落ち込んでいる。
介護福祉士の国家試験を受ける人も、ピークの14年(約15万4千人)と比べて近年は5~6割にとどまる。同協会事務局長の山田洋輔さんは「介護福祉士の養成は、介護の質を高めるためにも不可欠。経営維持のための財政的な支援を、国には考えてほしい。このままでは介護の人材不足はさらに深刻になりかねない」と訴える・・・

・・・2000年4月に介護保険制度が始まってから、介護職員は増え続けてきた。しかし、現場を支えてきたベテランが高齢化する一方で、有効求人倍率はホームヘルパーで約15倍(20年度)などと高止まりしており、将来の介護職を育てるはずの養成校にも学生が集まらない。
厚労省によると、40年度に必要な介護サービスをまかなうためには、約280万人の介護職員が必要になる。19年度(約211万人)と比べて約69万人足りない計算だ。
高齢者人口が最多となる40年ごろに向けて増え続ける高齢者に対し、すでに現役世代(20~64歳)の減少は加速している。それでも介護職員を増やさなければ、誰のケアも受けられない人が大量に生まれる事態すら起きかねない・・・