コロナ禍失業手当、日米の違い

10月4日の日経新聞「一目均衡」、田口良成・米州総局次長「米6兆円詐欺と日本の「安定」」から。

・・・米国が未曽有の詐欺に見舞われている。新型コロナウイルス対応の失業保険の不正取得で、被害規模は9月時点の推計で456億ドル(約6.6兆円)に達する。死者名義の社会保障番号を悪用した例も20万件超発覚した。
制度が始まった2020年3月、米国は混乱していた。経済活動が止まり、同年2月に3.5%だった失業率は2カ月後の4月に14.7%に跳ね上がった。同時期にニューヨークに赴任した筆者は半年以上、生活基盤の前提となる社会保障番号を取得できなかった。
コロナ禍の失業手当の見積もりは計約9000億ドルと巨額だ。監査担当のラリー・ターナー氏は声明で「制度を悪用しようとする詐欺師を引き付け、歴史的なレベルの詐欺につながった」と指摘した。
経済の底割れを防いだ当時の対策そのものを批判する声は少ない。緊急時であれば当初から圧倒的な物量を投入し、問題が浮上すれば後から対応する。そんな米国流の功罪が浮き彫りになる。すでに1000人以上が刑事告発され、米連邦捜査局(FBI)などは摘発を強めている。
仮に日本で同様の事態が起きたら、国会で連日騒ぎになるだろう。ある経済官庁の幹部に聞くと「そうならないよう、制度設計に万全を尽くす」と即答した。大規模な不正を抑止するためなら、初動が遅くなってもやむを得ないというのが日本流だろう・・・

もっとも、日本でもコロナ対策の給付金で、詐欺まがいのことは行われているようです。10月13日の日経新聞「「GoTo」キャンセル補償で不適切給付2億円 検査院指摘
・・・観光需要喚起策「Go To トラベル」事業で国が旅行・宿泊事業者に支払ったキャンセル料の補償を巡り、会計検査院は12日、本来の条件を満たさない不適切な給付が2020~21年度に9969件、2億1739万円あったと公表した。検査院は給付金の返還や審査方法の見直しなどを観光庁に求めた・・・

10月17日の朝日新聞には「コロナ下…雇調金の不正受給は総額135億円に 102億円は回収」が載っていました(10月17日追記)。
・・・企業が従業員に支払った休業手当を国が補助する「雇用調整助成金」(雇調金)をめぐり、コロナ下での不正受給が9月末までに920件、総額135億円にのぼることが厚生労働省への取材で分かった。迅速に支給するため、手続きを簡素化したことなどが背景にある・・・