玉木俊明著『近代ヨーロッパの形成 商人と国家の近代世界システム』(2012年、創元社)を紹介します(本の山から出てきたので、読みました)。
なぜ近代に入り、ヨーロッパがいち早く経済成長を遂げたのか。産業革命はなぜイギリスから生まれたのか。そして、近代主権国家システムを作り上げたのか。さまざまな説明がされてきました。
この本では、オランダのアントウェルペンを起点とする商人ネットワークの拡大と、財政軍事国家論を重点に説明します。
経済史は大きな貢献をしたのですが、物の生産と移動(貿易)の数値に根拠を置いています。他方で、知識(技術)や情報の貢献は、あまり明らかにされていません。資料が残らないのでしょう。現在の企業や産業を見ても、知識と情報の重要性は明らかです。原材料と機械があるだけでは、生産は起こらず、また消費されません。その点での、この本の主張は、納得できます。
もう一つの国家の役割も、近年重視されているようです。「国家の見える手」です。ラース・マグヌソン著『産業革命と政府 国家の見える手』(邦訳2012年、知泉書館)
本書は読みやすいのですが、ところどころ疑問に思う点もありました。玉木先生は、次々と興味深い書物を出版されているようです。