野中郁次郎先生『『失敗の本質』を語る』

この夏に、野中郁次郎著『『失敗の本質』を語る なぜ戦史に学ぶのか』(2022年、日経プレミアシリーズ新書)を読みました。

『失敗の本質』(1984年、ダイヤモンド社。中公文庫に再録)は、太平洋戦争における日本軍の失敗を経営学の観点から分析した名著です。読まれた方も多いでしょう。
太平洋戦争の敗戦については、たくさんの証言や記録が書かれていたのですが、作戦の失敗を客観的に分析したのは、この本が初めてでした。私も興味深く読んで、勉強しました。「日本軍は物量の差で負けた」といわれますが、ミッドウェー海戦では日本軍の方が上回っていたことなどは、初めて知りました。

今回の本は、その『失敗の本質』を主導した野中郁次郎先生が、同書誕生の背景や、その後の戦史に関わる研究の軌跡などについて語ったものです。野中先生の「私の履歴書」です。
先生が経営学を志した頃、日本の経営学は、ほかの社会科学と同じように外国の理論の輸入でした。そこで、先生は「独自の研究」を試みられたのです。また、経営学では成功した実例が取り上げられますが、失敗した事例は少ないのです。成功した会社は取材を受けますが、失敗した会社は拒否するからです。
新しい分野を切り開く人の苦労は、勉強になります。名著『失敗の本質』も最初は、出版社にいい顔をされなかったとのことです。