8月4日の朝日新聞オピニオン欄「50代、働いてない?」。
出世競争から降りた50代の勤め人が、とかく生きにくい世になった。「働かないおじさん」「会社の妖精さん」なんて言葉もある。ずっと懸命に働いてきたのに、どうしてこうなるの?
河合薫・健康社会学者の発言から。
「働かないおじさん」などと言われて50代で落とし穴にはまってしまう人がいるのは、日本社会のかたちが、いまだに昭和の高度成長期のままで動いているからです。
年齢人口構造では日本はすでにピラミッド型ではなく、働く人の6割が40代以上になっています。しかし、この世代の入社時と会社の仕組みはほとんど変わっていません。新卒一括採用、年功序列が続き、年々減らされる管理職の席をめぐって、同期で椅子取りゲームをさせられてきた。
高度成長期、定年は55歳でしたが、その頃の男性の平均寿命は60代でした。定年後は悠々自適の余生というイメージをいまだ引きずりながら、若い人たちにのけ者にされているのが今の50代です。
実は、50代でやる気を失っている人は周りが思うほど多くはありません。この世代を含め、900人以上にインタビューをしてきましたが、まだやるべきことがあると言う人がほとんど。競争心も衰えていない。労働政策研究・研修機構の調査では、50代後半の2割が昇進欲求を持っているという結果が出ています。
それなのに、会社からはセカンドキャリアを見つけろとプレッシャーをかけられる。でも、ずっと会社の肩書で生きてきたので、今更どうしたらいいのか分からない。プランBが無い状態です。リストラ候補にならないためには、群集の中で息を潜めているのが最善策になってしまう。目立たず、害にもならないようにしようという心理が働いてしまうのです。「会社にしがみついている」などと言われていても、当事者には葛藤がある状況でしょう。