朝日新聞文化欄連載「語る 人生の贈りもの」、佐々木毅・元東大教授の発言から。
第10回(8月9日)
《海部内閣は自民党内の反発で政治改革に挫折し、91年に総辞職。バブル経済も崩壊に向かう》
平成初期の日本社会はエネルギーに満ち満ちており、力余って金権政治やバブル経済の問題を生みました。ただ、課題に立ち向かう政治改革のパワーも持ち合わせていました。
第13回(8月12日)
第2次安倍政権下で首相官邸の力が強まりましたが、今度は後継の人材難に直面しています。官邸主導で政党の地位も議員の地位も下がり、自民党本部で何をしているかがよく見えない。政党は本来、人材育成や政策立案などに果たすべき役割は大きいのです。
まずは国会運営の改革が不可欠です。通年国会として野党議員の質問ばかりではなく、与党議員がもっと表舞台で働く。代わりに首相や大臣の出席を減らし、独自の調査機能を強化する。議院内閣制下の政府与党一体化を弱め、パーラメント(議会)が政策の質を上げるためにキャビネット(内閣)を厳しくチェックすべきです。
冷戦後に政治改革を進めた日本には、先進国クラブから脱落しかねない危機感があった。民間政治臨調や21世紀臨調を立ち上げて超党派の知恵を持ち寄り、粘り強く政策提言を続けました。
今また改革か後退かの瀬戸際にいます。諸学の知恵を生かして議論を重ね、よりよい政治を目指す。学問も言論も、積極的な政策提言により行き着く先は一つです。