6月2日の日経新聞夕刊「人間発見」、舞台プロデューサー 吉井久美子さんの「ブロードウェーで生きる 4」から。
・・・「ウエスト・サイド物語」や「オペラ座の怪人」など数多くの名作の制作や演出を務めたブロードウェーの巨匠、ハロルド・プリンス氏(故人)。同氏の半生を振り返る「プリンス・オブ・ブロードウェー」(2017年上演)を手がけた。
雲の上の人だったハルとの初対面は忘れもしません。劇場で紹介してもらったとき、私のような若手のあいさつに、ハルはさっと立ち上がるのです。同じプロデューサー同士、対等だという彼の気配りでした。当時とてもうれしかったと後に伝えたら「そんなの当たり前じゃないか」と笑っていました・・・
・・・ハルから学んだことはたくさんありますが、一つは「何に対しても『NO(ノー)』から入らないこと」です。もちろん無責任に引き受けてはいけませんが、仕事でも何でも頼み事がきたら最初に「YES(イエス)」と言う。
ハルは他人に「YES」と言ってもらえる話し方も心得ていました。おだてられると頑張ってしまうのは私の元来の性格かもしれませんが、人間はポジティブな気持ちが原動力となるものだと思います・・・